アルバム「ザ・スフィンクス」メンバー三人による全曲解説(2004年) | ノーナ・リーヴス オフィシャルブログ「LIFE」Powered by Ameba

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西寺郷太・奥田健介・小松シゲル NONA REEVES

アルバム「ザ・スフィンクス」発表から、約一ヶ月が経ちました。

3人で発売前に書いた全曲解説をアップします。また違った視点で、曲が聴こえてくるかもしれません。あまり最初から説明しまくるのも、なんだなと思って今まで控えてました。
では、どうぞ。


メンバーによる全曲解説

〇「愛の太陽」

 友人であるスーパーカーのジュンジが「ノーナの詞を一度書いてみたいな」と言ってくれた次の日、この曲のデモテープを彼に託した。するとなんとその次の日にジュンジが出来たよと家まで来てくれて、この詞をくれたのだ。早い!そのスピード感はまさに奇跡的だった。歌ってみたら、進んでいくごとに感動して、泣きそうになった。素晴らしい体験だった。(西寺)
 自分たちの曲のなかでここまで歌や歌詞が浮き上がって来る物は無いと思う。投げる直球に重さがついて来てると感じるのは自分だけだろうか?今のノーナがこの曲に集約されていると思う。 (小松)

〇「リズムナイト」

 「DJ!DJ!」と並ぶくらい発明品だと思う。インスピレーションこそがすべてであり、僕らはそれを手にいれた。ものすごく広い意味で、これは「ジャズ」である。 (奥田)
 漫才コンビ、スピードワゴンをはじめて知ったのは数年前の「M1グランプリ」の敗者復活戦。彼らの衝撃的な登場を見ていたその時のぼくは、まさか自分が後に「あたし認めないよ!」というスピードワゴンの必殺ツッコミを自分が曲にするなんて思ってもなかった。そして、彼らからのオファーで生まれた歌「あたし認めない」は、「リズムナイト」となってノーナ・リーヴスの歴史でもベストと呼べるディスコ・チューンに変身した。(西寺)

〇「重ねた唇」

 この曲が生まれた時、「西寺郷太というソングライター、シンガーを1曲で説明できる曲がやっと出来た」と思えた。
自分が子供の頃から目指してきた音楽を、かけがえのない仲間、尊敬するミュージシャンと高らかに鳴らす。それほどの幸せはない。作家としてメロディ、歌詞ともに今までの最高傑作だと思う。
 この曲はなんと9月末にエイベックスから発売の、ぼくらのフェイバリット・シンガーBOOのミニ・アルバムにも収録されている。バックトラックの演奏はノーナ・リーヴス、ミックスも同じ凄腕エンジニアD.O.Iさんで、リード・シンガーのぼくとBOOさんが入れ替わってるだけというある種前代未聞な作品でもあります。そちらも聴いてみてください。(西寺)

〇「ザ・スフィンクス」

 去年の夏から草野球をはじめた。久しぶりに太陽の下で走ったり、笑ったりしている。空を見上げると、今までの人生がなにもかもが計算されていたかのような、幸せな錯覚をおこす時がある。この曲は「太陽」と「人類の歴史」への壮大でささやかな讃歌なのです。プロデューサーには前作でもお願いした元シンバルズの矢野さん。ちなみに彼こそが、ぼくらがはじめた野球チームの監督なのです。(西寺)

〇「I WANT U BACK」

 キャッチーで、シンプルで、謎めいた、一瞬の夢のような曲。多分、こういう曲はぼく以外に誰も作れないだろうなと、かなりの自信を持っている。(西寺)

〇「涙をふいて」

 久々にいい曲ができた(笑)。気持ち的にはバカラックmeets「アンジー」(ストーンズのね)。最小限の音数でシアトリカルなイメージを作りたかった。Cメロからブリッジにかけてのブロードウェイ風味に気づいてくれる人がいたらうれしい。(奥田)
 一番最後まで歌詞に悩み、書き直し続けた曲。本当にいい曲だったので、足を引っ張らないように・笑、がんばってやりました。シンガーとしてもプロフェッショナルに徹しました。奥田の作曲家としての才能がひしひしと伝わってくる超名曲。(西寺)

〇「裸足の砦」

 自分がDJする時にかけるテンポ感のある曲を作ろうと思いました。そこにシャイライツのような追いかけコーラスや80年代AOR感が少し入ると良いかなと思いアレンジしていきました。サックスの加藤君は今回初めて演奏してもらいましたが手放しで最高のプレーをしてくれました。 (小松)
 今回、久しぶりに小松が曲を書いてきたのが、ニュー・アルバムの曲の中である意味一番「ノーナ的」な仕上がりの「裸足の砦」。男らしい、ガテンな仕上がりにしたかったので、熱い気持ちで肉体的な詞をのせました。小松と一緒にコーラスを歌ったエンジニア兼スーパー・セッション・ヴォーカリストの上野さんは、今回ほかの曲でも沢山コーラスしてくれて、アルバムの世界観をグッと深めてくれました。(西寺)

〇「ポケット・サンバ」

 どう考えても今作でいちばん脳天気。けどなんだかひんやりしてる、不思議な温度感を持った曲。自分のことを「いや、オレなんかサンバの端くれっスから…」と恐縮してる感じもおもしろい。あと、音がいい。 (奥田)
 今回、新しく構築したぼくの自宅のクリスタル・シティ・スタジオ(通称クリスタ)で作業中、奥田がポロポロ弾いていたところから作った限りなくセッション的な、ノーナに珍しい作り方と出来上がり曲。それを可能にしたのは、アイディアをそのままパックできる自宅スタジオでの作業。それはぼくらを新鮮な、素敵な場所へと連れて行ってくれました。電源環境、ケーブルなどから整えたりする(まだまだ発展途上ですが)手作りの喜びや、音の変化に対する一喜一憂が、今回のアルバムをより一層ピュアで真摯なものにしました。(西寺)


〇「ニュー・ソウル」

 今回のセッションは全てここから始まったと今改めて思います。喜びと苦悩‥そして新しい決意、そのテンションがこの曲には詰まっていると感じます。(小松)
 ラーメンズの小林賢太郎くんから、春の舞台のテーマ曲を作ってほしいとオファーされたのは今年の1月の終わりのこと。その瞬間、サビの部分が『ナーナーナー!』と頭で響きました。最初はインストだったんだけど、どうしても歌いたくなってきて結局シングルになりました。歌詞を一心不乱に書いて、賢太郎くんにファックスして反応を待ってたら、ものすごい太くてでかい習字のような文字で紙いっぱいに「最高。」と書かれた返事がカタカタと送られてきた・笑、ことを思い出します。シングルより、アルバムの最後のこの場面で鳴った方が、この曲のメッセージは伝わると思っています。(西寺)

〇「クリスタル・シティ」

 去年から、今年にかけて、ぼくと同じくらいの歳の仲間が相次いで亡くなりました。彼らのことを想うと、なぜか「いつかかならずまた繋がっていくんだ」という確信に似た、宗教心のようなものが沸き上がってきます。この広い世界、長い時代の中で「人と巡り会い」、「別れて」、また再び「巡り会って」ゆく。仏教の教えでいうと極楽浄土っていうか、最終的に今まで愛した人たちみんなが住む街、それが「クリスタル・シティ」。
 完成まで苦労したアルバム「ザ・スフィンクス」を象徴する、大切な曲です。
(西寺)

2004年9月4日
(ちょうど10年前)