日本精神神経学会は28日、米国で昨年策定された精神疾患の新診断基準「DSM-5」で示された病名の日本語訳を公表した。子供や不安に関する疾患では「障害」を「症」に改めるなど、差別意識を生まないよう配慮した。
主な例では「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」は「注意欠如・多動症」に、「性同一性障害」は「性別違和」に変更。「アスペルガー症候群」は単独の疾患としての区分はなくなり、「自閉スペクトラム症」に統合された。
医療現場では旧版の「DSM-4」などを診断に使い続ける医師もおり、当面は病名が混在する可能性もあるが、学会では「徐々に浸透していくことを期待している」としている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140528-00000557-san-hlth
先日報道されたこの件については
あちこちで異論反論が起きているようです。
私も新聞で読んだとき「えー」と声が出ました。
この報道における違和感
その1・差別意識を生まないように「障害」を「症」にする、とは?
表現を変えて差別意識がなくなるのかな?
なんかモヤモヤする。
その2・「障害(Disorder)」と「症」は違うのでは?
むやみに言い換えてしまっていいの?
わかりにくくなるんじゃない?
その3・表現の変更の問題と、「アスペルガー」が分類上なくなったのは別件なのに、いっしょくたに報じてる
Asperger Syndrome(アスペルガー症候群)がAutism Spectrum Disorder(自閉スペクトラム障害)に統合されたのはDSM5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、精神障害の診断と統計マニュアル)の指針。
これは普遍的なものではないけど(DSMが更新されたら変わる可能性もある)、世界中で使われる。
いっぽう、表現を変える問題は、日本精神神経学会の独自の指針。
別々のニュースなのだから、せめて行を変えて書いてほしかったです。
さて、言い換えはどのようになるのか気になりますね。
↓精神神経学会のHPに用語翻訳ガイドラインがありました。
https://www.jspn.or.jp/activity/opinion/dsm-5/files/dsm-5_guideline.pdf
これによると、
児童青年期の疾患では,病名に障害とつくことは,児童や親に大きな衝撃をあたえるため,「障害」を「症」に変えることが提案された.
不安症およびその一部の関連疾患についても概ね同じような理由から「症」と訳すことが提案された.
さらに連絡会では,disorderを「障害」とすると,disability の「障害(碍)」と混同され,しかも“不可逆的な状態にある”との誤解を生じることもあるので,DSM‒5 の全病名で,「障害」を「症」に変えた方がよいとする意見も少なくなかった.
その一方で,「症」とすることは過剰診断・過剰治療につながる可能性があるなどの反対の意見もあり,専門学会の要望の強かった児童青年期の疾患と不安症およびその一部の関連疾患に限り変えることにした.
…ということで、全部変わるわけではありませんでした。
「障害」表記のままのもあります。
(ストレス障害、適応障害、過食性障害、パーソナリティ障害etc.…)
そして、差別意識を云々…という理由ではありませんでした。
さて
言い換えは並列表記になっていて、
たとえば
>Communication Disorders コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群
>Language Disorder 言語症/言語障害
…といった風です。
(スラッシュの右がこれまでの表現、左が言い換え)
しかし言い換えを機械的にしているから、意味がよくわからなくなってるものも多い。
もっと精査するべきだったのではないかなあ。
「自閉スペクトラム症」は「自閉症スペクトラム」じゃダメなの?
これなんて、一方が「症」で一方が「障害」表記だし。
Disorderを日本語にするのが難しいってことなのかもしれない。
だったらもう無理に訳さないでDisorderのままでいいんじゃないかしらね。(Syndrome『シンドローム』みたいにそのうち日本語になじむかも?)
現場ではDSM4をまだ使っているところも多いし、以前の言い方をしたらいけないという事ではないはずです。
「学習障害」と言った人に、「今は学習症って言うんだぞ!差別表現するな!」と批判するのは言葉狩りというものでしょう。
馴染む言葉ならそのうち自然に定着していくと思いますが、はたしてどうなるでしょうか。
どうせなら「Autism(自閉)」の訳を考え直してほしいなあ。
これこそ誤解を招いているし、もっと適した日本語があるはずなんだけどなあ。