人には隠すことのできない3つのものがあるという。
咳、貧しさ、恋心。
あの頃、必死に隠そうとしていた私の気持ちや苦しさも、
実はどこからかにじみ出していたのかもしれない。
隠すことができないくらいに、今にもあふれ出しそうだったから・・・・
時は遡ること1年半前の夏。
私は、仕事関係の先輩から口説かれていた。
それは、ブログをほとんど更新しなくなる直前にちょっと書いた先輩。→ ☆
一緒にご飯を食べに行って以来、
親身になって、私のことを考えてくれる先輩に、私は心を打たれながらも、興味をつのらせていた。
先輩は、
「かわいい」「魅力も才能もある」「振り向いてくれるまで、ずっと言い続ける」
などど、ありきたりな台詞を言い続けた。
映画が見たいな、今からだとDVDバン(個室でDVDみるところ)しかないから、DVDバンにでも見に行かない?
ある夜、先輩は言った。
やだよ、変な雰囲気になるじゃん。
初めは簡単に流していたのだけれど、
ワインを飲んで、お酒も回ってきた私は、断るのも面倒に思い、
軽い気持ちでDVDバンに行った。
いざ行くというと、急に焦って、おたおたしている先輩の姿がかわいかった。
そして、DVDバンにいったが、選んだ映画がつまらない・・・・
見ながら、先輩とキスをした。何度もした。
その日から、
1週間連続でホテルに行った。
あるホテルでは、私と先輩を見た受付の人が、
売春をしているのではないかと疑って、身分証を要求してきたりした。
それくらいに、私と先輩の年は離れていた。
1週間たったある日、
私は突然、先輩がわずらわしくなり、
もう会うのやめよう。電話もしてこないで。
と告げた。
嵐のように電話が着たが、一切、無視した。
ここまでは、今までに、何回もあったパターンだった・・・・・
ホテルまでは行かないにしても、
チェウへの気持ちや苦しさから逃れようとしていた私は、
何人ともデートを繰り返しては、すぐに嫌になって連絡を経つということを繰り返していた。
これまでと同じようにいかなかった理由は、
先輩と私は仕事上、同じビルで働いていたためだ。
嫌でも、会ってしまうのだ・・・・・
ちゃんと会って話がしたいと先輩は言った。
私も、こういう環境上、それがいいと思い、承諾した。
先輩と会社の会議室で会った。
その3日後に、私は別の男の子と香港&マカオに1週間の旅行に行く予定になっていた。
お前のその環境は、普通じゃない。
本当は、お前とどうしても一緒に見たい映画があった。
それは『ペパーミント・キャンディー』だ。
先輩は言った。
ペパーミントキャンディーとは、2000年に公開された日韓共同制作の映画。
民主化に向かう韓国で起こった光州事件をモチーフにした作品。
そのときに負った心の傷をぬぐえずにいる主人公ヨンホは、
どんどんと自己を破滅の方向に導いていく。
光州事件の前、
まだ幼く、淡い初恋をしていた青年ヨンホが、
光州事件後に、人が変わったように壊れていく。
その背景には、そのときに負った、心の傷、トラウマがあった。
というストーリーだ。
光州事件の体験者の中には、
いまだにその傷から立ち直れない人たちもいる。
軍事政権から民主化につながるまでの韓国を知る名作である。
お前は、この主人公に似ているよ。
お前は、そんな風に軽く生きる人間ではないと思ってる。
なにが、お前を、そんな風にさせているんだ?
私は、この先輩の言葉に衝撃を受けた。
だって、会社でも先輩の前でも、
そんな弱音なんて見せたことなんてなかったし。
苦しくなっても、ほかの人には、そんな姿を絶対に気付かれないようにしていたつもりだったから。
衝撃的な出来事だった。
この2ヶ月後に、私はチェウに自分の思いを伝えることになる。