歪み〜レトロウイルス リメイク

第6章 涼 消滅?…ハートダイヤクラブスペード


シンが話しを終えようとした時・・・

気分はいいのだが、何んか変な錯覚が頭の中を支配するかのように…

左足が透明になって、消えてく気がした…

その時、シンの顔が強張っているのに気が付いた。

「涼くん!」

「これ以上この世界にいることは危険だ!」

「どう言うことですか…?」
俺はシンに訪ねた。

「涼くん、この世界に来て今迄と違った事は…違った感じは…?」

「初め、時計が壊れたのかと思ったのですが…」

「ある時から微妙に、気持ちと身体の動きが、違っている事に気が付き…」

「この世界は、自分がいた世界より速いスピードで時が過ぎているのではないかと…」
俺が感じたまま、シンに話しをした。

するとシンは…

「やはりそうだったのか…?」
眉間にしわ寄せて、シンは答えた!

「何かあるんですね?」

「危険な要素が…教えてください…大丈夫です!」

多少動揺はあるが、俺は、覚悟を決めてシンに訪ねた。



「ここに居られるのには…」

「いや、この世界に居られるには期限がありそうだ…」

「かなり少ない時間の…」
シンは言葉を選びながら話してはじめた。

「かなり少ない時間…?」
俺は「かなり少ない時間」その言葉に引っかかった?

「君の身体が透明化し始めている」

「それは、極端な時差により君の身体がこの国の気候に同化し…全て同化してしまうと…」

俺はシンが言う次の言葉の予想はついていた!

「大丈夫ですよ…全て教えて下さい!」

心とは裏腹な事を言っていたが…

案外冷静な自分に俺自身、酔いしれていた。

「…全て同化してしまうと君の存在が身体ごと消滅してしまうのだよ!」

「どうして、そんな事が解るのですか?」
俺はシンに訪ねた。

「それは、身体が次元について行けず、身体の細胞が分解、乖離し始めているのだよ…」

「しかし、涼くんの強い信念により、乖離が通常より多少遅れていると思われるのだが…」

「子供の頃、父親から聞いた事があったのだ・・・」

シンは彼の父親からの話しをし始めた。



「父親が勤めを終え、帰宅中に観たことの話しだった」

「父親がかなり興奮した様子で、喋り始めたのを鮮明に覚えている…」

「それは、今迄に観たことの無い様な容姿をした男が街を徘徊していた…」

「よく観ると右半分が点滅するように透明、肉体を繰り返していた!」

「驚きながら、もう一度その男を観ると大きな叫び声を上げた瞬間…」

「マントを取った時のイリュージョンの様に服装を残し、消えてしまったのだ…」

「科学的証明するものは無いが、私はその後、この様な事が無かったかと事例を調べた結果…」

「数件の目撃証言があった事が確認できたのだよ…」

「消えて、君の世界に戻れることは…」

「決して無いらしい…」

「君の存在が消えた瞬間、私達にも何も残らなくなってしまうんだよ…」

「涼くんの事を覚えている人は客観的に観た、感情導入が無かった…」

「人間しか記憶に残らないのだよ!」

「なんてことだ…だから今すぐ戻れるところに…」

想像を遥かに超えた言葉が、シンの口から発せられた!

俺が一番つらく、悲しいのは、俺が消える事では無い。

彼らの頭の中にある、俺の記憶が全てリセットされる事だ…



「シン、戻れるところとは…」
俺はシンに訪ねた。

「君がこの世界に入ってきたと思われる場所…」

「そこから戻る事だよ…」

「君の世界へ戻れるまで…」

「七〜八時間は残っているから探し出す事が出来るだろう…」

「シン、確率的にどのくらいあるのですか…?」
俺は冷静にこれからの行動を考えられるようになっていた。

「…三十%ぐらいか…?」
シンは、険しい表情で答えた。

「…エッ…三十%…ですか…」
俺は確率を聞いたが、はじめから腹は決まっていた。

レオ、リクと共にシンボルに向かう事を…

そして自分が消え、何も残らなくてもやり抜く事を心に決めていた。



俺はシンボルに向かうことをシンに伝えた。

「涼くん、これを持って行くといい」
シンが俺に渡したものは、マスターキーと万能工具であった。

マスターキーは、九十五%の鍵はこのキーで開ける事ができ…

電子化された登録制キーは、柄の部分を差し込むと対応出来るようになっていた。

万能工具は「ナイフ、ノコギリ、ハリガネ、ドライバー」など五十mmぐらいのケースに収納されていた。

その万能工具は、使いたい工具のボタンを押すと、飛び出す仕組みになっていた。


「涼くん任せたよ…必ず戻って来るんだ」
シンが俺に力強い言葉をかけてくれた。

「シン、ありがとう」
俺はシン礼を告げ、家を出た。

かれこれ四〜五十分シンの家に居たのだろうか?

もうすっかり陽は落ちきり、闇夜になっていた。

眠りに落ちる前より人が増え、ラッシュアワーの様に押し合いながら、ゆっくり進んでいる。

「レオ、この群衆は一体何をしているんだ?」
俺はレオに、苛立ちながら言葉を投げかけた。

「民衆は恐れているんだ…」

「光から得体の知れないウイルスに犯されることを…」

「そして殆どの人は陽が落ちてから行動するようなになったんだよ!」

「目的はいろいろあって、ある人は、食糧、衣服、住居などかなぁ…」

それにしても、ゆっくりである。

俺に残された時間はわずかなのに…

気のせいか時折、右半分の感覚が薄れ、左足に負担が掛かるのがわかる。

そんな事を考え、思いながら、群衆にまぎれて少しづつ、少しづつ歩き進んでいた。

「レオどうにかならないのか?」
俺はまた愚痴を投げかけた!

「ガタガタ言うな!…もう少しだ我慢しろ!」
リクに一喝された!

そんなやり取りの中、けたたましいホイッスルの音が聞こえ…

直後銃声が轟いた瞬間だった…

民衆が左右に分かれ映画「十戒」のシーンが俺の頭の中に蘇った。

「…ヤバ・・イ…」
俺は声を出した時には、もう遅く政府警安が俺たち三人を取り囲んでいた!



眼を開けた瞬間、頭が重くこのまま横になっていたかった。

何があったのか、思い出すまで、二〜三分かかっただろうか…
そうか…

警安に囲まれ、抵抗虚しく捕らわれて護送車に載せられ、何かを嗅がされ眠ってしまったようだ?

頭の重みとかなり蒸し暑さで目が醒めた。

俺が気づいてから、数分後レオ、リクも目を醒ました。

「大丈夫かリク、レオ…」
俺が声をかけた。

「大丈夫だよ涼・・・」
レオが声をかけてきた。

「大丈夫かリク・・・」

俺が声をかけると頭を振りながら

「ああ、大丈夫だ!」
とリクが答えた。


押し込まれたこの部屋に窓が無く、四十ミリぐらいの裸電球が俺たちを照らしていた。

電球には、二、三匹の羽虫が嫌な音色をたてて、八の字を書くように飛び回っていた。

羽虫は二十ミリぐらいの大きさで、飛んでいるのに頭部、胴体だけがハッキリ見える。

それは羽を素早く動かしているからだるうか?

羽部は全く見えず、青唐辛子のような胴体とハエのような頭部が、はっきり見え玉虫色の光を放っていた。

嫌な音色は羽を素早く動かしているために出ているのか、蜂と小鳥が混じったような…

「ブーンチュウ、チュウチュウブーン」

と奇妙な音を発し、リズム、テンポ、音量が一定ではないため喉から胃のあたりにムカックような、不快感をあたえた…



「うるさいなぁ〜」
レオがそう言いながら羽虫を素早くキャッチし握りつぶした。

「大丈夫かレオ・・・?」
俺はア然とした。
レオは戸惑いも無く羽虫を握りつぶしたからだった。

「えっ・・・何が・・・」
レオが答えた!

「そしな虫を素手で潰して大丈夫なのか?」

「ああ、これ嫌な音を出すだろう…」
レオはそう言いながら握っていた手を開き、潰した羽虫を俺にみけた!

「涼、この虫知ってる?」
レオが俺に訪ねた。

「そんな虫観るの初めてだよ…嫌な音を出す虫だな…」
俺が答えれると

「この虫はチャブといって、虫の出す音から付いた名前らしいよ」
レアが虫の名前を告げた。



「今度この虫を食料化していく事が決まっているようなんだ!」
レオが教えてくれた。

俺がこの世界で観るはじめの生き物だった。

「頭と羽を取って・・・」
レオが独り言をいいながら何かをしていた。

「レオ、何をしているんだ!…」
俺は目を疑った。

レオはその羽虫を躊躇せず口の中に「ポイ」と入れ食べ始めた。

玉虫色の胴体のみを食べる。

「多少酸味がありなかなか美味しいよ!」
レオが虫の味の評価をしていた。

床は板張りになっているが、ところどころに亀裂が入っていて、かなりの老朽化が感じられた。



果たしてここは何処かなのたわろうか?

あの奇妙な建物「シンボル」の中なのだろうか?

シンボルは遠めで観ると目新しく感じるのだが、実際はどのぐらい前に建てられた建物なのであろか?

ここは、何処なのだろうか?

外部と接触できるのは唯一ドアだけである。

ドアには格子の付いた…

ガラス窓がありそこから外の廊下を観ることが出来るのだが…

ガラスは虫眼鏡のように湾曲をしていて、廊下の風景も普通に観ることができない。

人、動物・・・何かは通ってはいるのだか…



なんとか、ここをから出なくては…もう時間ない!

焦ることなく、どのタイミングでここから脱出するかだ?

「レオ、リク、ここは何処か予測がつくか?」
俺は躊躇なく、二人に訪ねた?

「そうだね、多分シンボルの内部だと思われるよ。」

「ね、リクおじさん!」
あどけなくレオが答えた!

「そうだな!たぶん、シンから聞いていたんだが、シンボル内に一時的に収容出来る牢獄があると…」

「それは・・」
リクは意味有りげに答え、俺に説明し始めた!

「なぜ、この場所がシンボル内にある事の僅かな確信は…」

「シン、テクがまだシンボル内で働いていた頃、この国の未来、将来の食品を検討していた…」

「そんな時、ある休みの日にシン、テク夫妻(イマが妻)がおかしな話しをし始めた…」

「それは…シンボルには地下があり…」



シンボルの地下には、はたして何があるのか?
俺はリクの話しを聞いていた。

「シンもシンボル内の施設で研究関連以外は、あまりよくわからなかったのだが…」

「ある事から、シンボルの地下には、牢獄と工場があるのではと…」

「ある事とは、あの気泡が集結し「歪み」が出来てから…」

「動物が絶滅そして、ウイルスの蔓延していった…」

「その後、男、五十歳までの命」

「シンは五十歳を過ぎてから、ウイルスが蔓延し始めたのだが、命拾いしたようだ…」

「五十歳前で浴びたやつは、たまったもんじゃないぜ…俺同様…」
リクは落ち着いて、語る様に悟るように、噛み締めながら語っていた!

「五十歳前のやつらが黙っているか?」

「わかるよな!」

「そう、暴動が起きた…そんな事から、シンボルの地下に牢獄が出来たと聞いている…」

「まあ・・・牢獄だけじゃないようだが?」