歪み〜レトロウイルスリメイク


第2章 空の歪み…ハートダイヤクラブスペード


道幅十メートルはあるだろか?

真っ直ぐ伸びた道の先に、奇妙な目新しい建物が聳え立っていた。

まるで中国上海にあるテレビ塔が頭に浮かんだ。

上海であの建物を見た瞬間、奇妙な形で近未来的な建物で外見に合わない?

周りのビルと歩調が取れずに浮いている感じがした。

両サイドには老朽化した建物が並んでいる。

テレビ塔辺りを眺めていると・・

「な・なんだあれは・・・・?」

俺は、一人で叫んでいた!

それは空が!空間が大きく「歪む(ゆがむ)」のである。

その「歪み(ひずみ)」はテレビで見た何かの実験で、カラのペットボトルに気圧をかけると、変わった伸縮を繰り返す。

「グシャ」戻り「グシャ」を繰り返していた…

ありえない事だが不規則に「歪み(ひずみ)」が空を変形させていた!

陽は出ているが、しかし「歪む」事で光が屈折し、落ち着きがなく、地上に降りてくる。

鈍よりした雲り空だが、落ち着きがない光は、突然自分の背中を照らした。

そして、またあの悪臭が鼻孔に入り、ハンカチで鼻、口を覆った。

「一体ここは何処なんだ?」
と独り言を言い…

「俺はどうなったんだ?」の自問をまた繰り返していた。

空の「歪み」ばかり気になり、周りの風景が目に入っていなかった。

光が背中のあたりから足元を照らしたことで、目線が一瞬下に下がった。

するとそこには、俺が今まで生きてきて観たことのない風景が広がっていた。

表現できる言葉が頭の中から消え、8ミリ映写機のモノクロ映画を観ているような風景に変わった。

かなり昔の記憶のようで、親父がシーツをスクリーン代わりにして映写機を回していた・・・

でも、内容が思い出せない、ただ何か昔の感覚が胸を熱くするが…

そんな気持ちを打ち消すように、空から真っ黒いものが落ちてきて、大きな爆破音と共に、目の奥が真っ赤になっていく錯覚に襲われた。

「はー、はー」と深くため息を吐いた。

我に返り、ゆっくり眼を開いてみた。

するとそこには、おぞましい風景が待ち構えていた。



テレビ塔の様なビルにつながり2、3キロぐらいの道程に何かが順序正しく並べられていた?

遠くばかりを観ていたせいか 「そのもの」を確認していなかった?

それは紛れも無く「人」であり屍であった。

転々と並べられた屍は、一番近いもので約五、六メートル先にあった。

屍は道路両端に置かれている。

直視したくないが、不思議と意識するようになってから目入り、避けることが出来ない。

意志はあまり伴わないが足が動き出していた。

何故死んで、何故ここに置かれているのかわからないが、置かれている屍は穏やかな顔をしていた。

頭の片隅で、何処かで観た様な?感じたような?気がした。

「そうか・・親父・・」

と訳のわからい独り言を口走っていた。

穏やかな屍の顔を見て、親父の葬儀が思い出せされた。

親父は身体が弱く、若くして結核を患い、肺が一つ無く、肩甲骨にそって大きな縫い目があった。

見るだけで痛々しく感じられた。

そんな親父だったが、身体を惜しまず仕事に、付き合いに精を出していた。

そんな親父は、俺の誇りに思えた。

しかし、片肺の無い親父にとって、楽ではなかったようだ。

酒と疲労から肝臓が弱り始め、風邪の菌が肝臓に入り込み肝硬変から肝臓癌となり…

一カ月で死んでしまった。

五十六だった。

死、直後は赤黒い顔色だったが、埋葬の時は顔色も良く、穏やかな表情をしていたことが思い出された・・・


並べられた、死体の顔から首を見ると、何か着けているのがわかった。

不思議にその先の人も、その先の人も、同じようなリングを着けていた。

そのとき突然エンジン音が聞こえ、余儀なくブルドーザとトラックが手前の曲がり角から現れた。

その車は屍を見て、想像通りの事をしはじめた。

ブルドーザが死体を掬い、トラックに載せていた。

二体を掬い終わり、こっちに向かってくる。

「ヤバイ・・・・」
俺は死体を跨ぎ直ぐ手前の細い路地に入っていった。

路地はかなり薄暗く、湿気を感じる。

商店でも行っていたのだろうか?シャッターが下がっていた、ここ数年、シャッターを上げた形跡が無いようだ!

横には階段があり二階が住居になっているようで、左右みな同じ建物の作りをしていた。

俺の足音に気づき二階から誰がゆっくり降って来た。

しかし、俺は不思議と恐怖を感じなかった。

怖れていたのは二階から降りてきた子供で、俺の顔を降りながら不安な面持ちで覗き込んでいた。

歳は七〜八歳だろうか?

俺はなんて言葉を掛けていいのか戸惑った?

そんな時、前に聞いた駅員の無機質な声を思い出した。

通じると確信し
「こんにちは」と声をかけた。

少年は、強張った表情で俺の姿を上から下まで舐め様に見ていた。

俺は階段の途中にいる少年に、今度は微笑みながらもう一度
「こんにちは」と声をかけた。

すると少年の瞳が少し輝いて見えた。

「俺は怪しものでは無い・・・ここは?」
と言いかけようとした時、背後から慌しい足音が近づいてくるのを感じた。

「こっち、こっち」と少年が手を振り、2階にある部屋へと導いてくれた。


ドアを開けると母親らしい人が玄関に立っていた。

「どうしたのレオ?」と玄関先にいた俺に間違えて声をかけた「どうも・・・」

「時間外にどうして街を彷徨ってたんですか?」

母親が俺に少し強い口調で話してきた!

「かあさん・・ゴメンよ・・放っておけなかったんだよ!」

その少年は、母親らしい人に俺を家に招いた報告をしていた。

そして俺のことを見ながら

「かあさんもわかでしょ!この人が身に付けている物、見たことある?」

そう言い、少年と母親は俺の全身を食い入るように観ていた。

部屋の奥には、二人以外に誰かが居るようだ、話し声が聞こえてくる。

俺はまず礼を言った。
「ありがとうございます」

「もう時間内になったから大丈夫でしょう!」
母親らしい人が言った。

「え・・時間内って?」
俺は何がなんだかさっぱり、わからなかった。

「まあ、狭いけど入ってください」母親らしい人が言った。

「誰だ?また変わった服を着ているなぁ」
年の頃、五十を過ぎた白髪の男が俺を見て言った!


その家は、約八畳ほどの部屋に四人で住んでいた。

少年のレオ、その母親のイマそして、レオのおじさん、母親の兄さんリク、その妻のノナであった。

部屋は一間で台所、トイレが付いていた。

部屋の中は、外より少し湿度が多く蒸し暑さを感じた。

この狭い部屋に、四人も住んでいるせいなのか・・・

「あなたの名前は」
母親のイマが俺に訪ねた。

「久我山 涼です」
と俺が答えた。

「え・・・」と母親が怪訝な表情となり・・・

俺、以外の全員が顔を見合わせていた!

今迄に聞いた事がない名前らしい。

「あなたは何処から来たんですか?」

俺は、なんて説明していいかわからなかった。

「ここは何処なんだ 教えて欲しい・・・」
俺は、素直に訪ねた!

「昨日の夜、気が付いたら、ここの駅に着いていて・・・・」

「駅って?」と母親に聞かれた!」

「ここより5百メートルぐらいの場所にあったんだ?・・・」
と答えた?

「え・・・あそこはかなり前に駅が無くなり・・・・それに、電車なんて動いて無いわ」

「そんな馬鹿な!」
俺は唖然とした!

しかし、見るもの全て驚愕する物ばかりだが、不思議と受け入れる事が出来た。

「信じてもらえ無いかも知れないが、俺は別次元、別世界から来たのだと思う・・・」

「だから、衣服も髪型も違うんだ!」
少年のレオが声を弾ませて話し掛けてきた。

確かに違うと俺も思った。

大きく違うのは服装であり、男女に区別が無く多少赤系が女、青系が男であり、ズボンと上着が一対物である。

例えば、夏に男が着る甚平の様だ。
この世界はあまり寒くないみたいだ!

それは不規則に「歪む」空に光が差し込む時、かなりの暑さを感じたからだ。

髪型は男女ともに短髪で、多少女性の方が長く、四十ミリぐらいにまとめてあり、耳には大きめなピアスを付いて女性らしさを象徴させていた。

男性は屍を見ていたせいで、誰もが、短髪だった事が脳裏に焼き付いていた。

かなり刈り込んでいて、長くても二十ミリ「リク」は十ミリぐらいになっていた。

レオは丸坊主に近く二〜三ミリで俺の脳裏にドラゴンボールのクリリンが通り過ぎた。



そして気になっている「首のリング」の事を聞いて見た・・・・

アクセサリーなのだろうか?

真っ白なリングには、三桁のカウント表示が付いていた。

「そして、リクの首にそのリングが付けていた…何故なんだ…」

俺は心の奥底で自分がかなり無神経で、残酷な人間である事を感じていた。

「五時から七時が回収の時間で、絶対に街を歩いてはいけない時間帯なんだ!」

「それなのに、足音が聞こえて来たんだ?」

「回収人も道路に降りる事は無いはずなのに・・・だけど、あなたが居たんだ?」
レオが話しかけた。

「部屋に俺を入れて、問題無いのか?」

「大有りだよ!」途中でリクが皮肉交じりに口を挟んできた?

「あと、二〜三時間ぐらいは、大丈夫でしょうが・・・・あなたは政府に登録されていないから・・・」

「しかし、追いかけてきましたよ!」

「追って来たのではなく、不思議に思えたのよ・・・この時間帯に・・・ヒトが・・・捕まれば大変な事になるわね?・・・・」

「でも・・・回収人はマニュアル以外の事はなにも出来ないの」

「回収して報告後、調査班が動くと思われるけど、登録がないので混乱しているはずよ」

「回収時間とは…屍を回収する時間なんだな…そして何故、無造作に人間をあのように・・・」
俺は強い口調で言った!

「わかったよ!どうでもいい事なんだが…俺も、この先長く無い…話してやるよ!・・・」
リクが投げやりな口調で俺に向かって話しかけて来た。



「どのくらい前になるだろうか、人が増え過ぎて、食糧が徐々に高騰していっだった」

「そんな中、変なウィルスが流行り、動物が絶滅していった…」

「動物が絶滅したのは、ウィルスだけじゃあない、大気が汚染されオゾン層が破壊された結果とも言われているが…」

「そのせいで空が「歪む」んだな!」
俺は答えた!

「おまえ!観たのか?・・・」

「あんな事があり得るのか?」
俺はまだあの現象を理解していなかった。

「俺も偉そうな事はいえないが、この国の人間は好き勝手なことをし過ぎて・・・誰も歯止めを掛けようともしねぇからな!」
リクが呆れた口調で話していた。

「こんな事、誰も予測が出来なかった・・・・一人を除いては・・・」

「政府は何もしなかったのか?」
俺は思わず口を挟んだ!

「したさ・・・適当な事を・・・面倒くなっちまったんじゃないかな?・・・」

「ちょと待てよ!国を運営しているのは、政府だろ!」
俺は怒っていた!

「お役所さん達、真面目にやってきた奴らは、変な責任を負わされて、辞めさせられ…」

「私益しか考えない…
無能な奴で何も出来ない…
口先だけはの奴が…
政策を考え得るようになった」

「そんな奴らが…
俺たち、国民のことを…考えられるか?」

「そんな、世の中になっちまったんだよ…」

「考えることをやめた?…
その場凌ぎの政策がつづき…
国民の食糧制限が取られる様になった頃…
今迄での政策とは、何かが変わった感じがしたんだ!」

それは・・・

「金が有ろうと無かろうと食糧は週二回の配給制になった…こんな事は政府が考えられるわけが無いんだが?」



「表向きは何も変わっていない様だが、こいつの連れが「大変な事になるぞ」と口癖のように言っていた」

「影に、別な支配者がいて政府を操ってると・・・・・」リクが誇らしげに言った!

「こいつの連れイマの夫で、レオの父親「テク」だ!」

「彼は科学者で「医学」「天文学」などあらゆる、学術を修得していた。」

「人望も厚く、統率力もあった!」

「彼はいち早くこの国の危機を予測し、苦言を発し、改善建て直しを考えていた!」

イマ、レオ、ノナ、俺はリクの話しをうなずきながら、聴き入っていた。

「無能な政府は、テクを怖れた」

「いろいろな事を考え、提言するテクに・・・・そしてテクは、クーデターを企てだと、有りもしない理由をつくられ、政府に連れて行かれた・・・」

「テクを殺しはしないだろうよ…
テクは多分利用されていると…
なんせ知識があり、この国では、あまり存在しない、考えか方をしていたからな…」

「そんな中、どえらい方針が政府より出され、国民につきつけられた?」

「それは、この世界存続の大きな決断なんだと?」
皮肉交えてリクが語り始めた。

「テクが捕らわれて何日が過ぎただろうか?」

「政府の食糧貯蓄もかなり厳しくなって来たらしく、配給に影響を与えられると報道された頃には…」

「リク!どうしてウイルスが流行り、動物が絶滅したんだ?」

「そのリングと関係は有るのか?」

リクの話しは、肝心な説明が欠けているので、しっかり理解出来ずに、俺は質問していた!

強い口調で俺は、聞き直すと、リクは…

「そう熱くなるなって・・・この三つは全て関係ある事だ!」

「良く聴いておけよ!」
俺の焦りを抑制する様に言った。

「ある日、突然、空に小さな穴が出来、それは気泡のような形をしていて空一面に広がっていた」

「そしてそれが時間と共に集結し空を「歪め」(ゆがめ)「歪む」(ひずむ)ようになり不規則な光が差し込むようになっちまったんだ・・・・」

「テクは「歪み」(ひずみ)から得体の知らない、ウイルスが光と共に入って来る怖れがあると予測していた・・・そして、その予想が的中してしまったんだ!・・・」


「その集結した気泡がオゾン層を破壊し、破壊された「歪」からこの世界以外の細菌が入り込んできた・・その一つが動物を絶滅させたウイルスが混じっていたと聴かされているが・・・」

「ウイルスのせいだけではなく、人口が増え過ぎその他の食糧でも補えなくなってきた・・・」

「このウイルスは、特に食糧、動物で鶏、豚、牛などに感染し猛威を振るった…
そしてある特有の性質があった」

「特有の性質とは…動物の絶滅後、変な方向にこのウイルスが進化しはじめ…
人間にも感染する様になってきた」

「それは男で四十歳を過ぎると感染、四十九歳になると「陰」「陽」を判別され…そして一年後ウイルスが全身を支配し死を迎える!」

「それもちょうど一年だ!」

「図ったように満五十の誕生日に死を迎える・・・それで政府の取った処置は・・・俺達を見捨てる、呆れた対策だった!」

「陰性が出れば、抗体ができるため免疫体となるが、必ず十ヶ月が過ぎると免疫力が落ち死を迎える!」

「陽性が出れば、全感染し、激しい痛みと幻覚に襲われ一週間以内に死ぬ!」

「どっちが出ても、サヨナラだよ・・・」
参ったよと、ばかりにリクが話しを止めた!

呆れた対策とは、ワクチンを大量生産して、全世界の男に四十歳で感染後、投与するのが当たり前なのだが…

原料不足など人口に対応出来ないとの事が理由らしい・・・・が


俺はこの不合理極まる、いい加減な世界をなんとかしたいと考え始めた・・・

「リングは、陽性、陰性共に付けさせられ、死へのカウントダウンが始まる…」

「陰性は陽性の首から菌を採取してワクチンとしていく」

「陽性はワクチンを首から毎日少量づつ点滴のように投与して、生き延びることが出来る…一年は…」

「カウンターは「360」カウント付きになっている」

「わかるよな…」

「毎日陰性は吸いとられ、陽性は投与され続けるためのカウンター
なんだよ…」
リクが覇気なく言った。

そして・・・

「ちなみに俺は陰性らしい・・・」

「陰性らしいって、リク!お前の命の問題だぞ!」
俺はリクのネガテイブな考えに怒りを感じた!

「政府機関はそんないい加減なのか!」
俺の声が今迄以上に大きくなった!

「お前は本当に熱い奴だなあ、まるでテクのようだ!」
リクは落ち着き、微笑みを浮かべて話していた。

「リク!お前は辞めてくれ!」

「涼と呼んでくれ!」

「わかったよ!涼!」

他のみんなは、俺とリクの話しを食い入るように聴いていた。

ある時は頷き、ある時は微笑み、そして涙を見せる時もあった。

この家族と意志の疎通が取れ始めてきた感じがした。