歪み〜レトロウイルスリメイク



プロローグ
俺は今「ちがう世界」で暮らしている。
「この世界」俺の国が消滅したからだ!

俺、久我山 涼が「ちがう世界」に迷い込み、レオと出会い、「ちがう世界から来た魔物」ロイとの闘争はここから始まったのであった。

主な登場人物

主人公 久我山 涼…涼(この世界)

レオ…(ちがう世界)

テク…レオの父
(ちがう世界)

イマ…レオの母
(ちがう世界)

リク…レオの伯父
(ちがう世界)

シン…レオの祖父
(ちがう世界)

ロイ…ちがう世界から来
た魔物?
(ちがう世界)

ヨウ…ロイの相棒
(ちがう世界)

河合 剛…剛(この世界)

加納のりか…のん、剛の
恋人
(この世界?黄泉の国?)

キョウコ…ロイの恋人
(この世界)




第一章 ちがう世界へハートダイヤクラブスペード


生暖かい風が全身に当たり息苦しさを感じ目が醒めた。

眠ってしまったようだ。

そこは電車の中だった、何も考えることなく、薄暗い室内の蛍光灯を眺めていた。

四本の蛍光灯の内、一本は短い周期の点滅をせわしなく繰り返し、もう一本は約30秒周期の点滅を繰り返していた。

目が醒めてから、何かの暗示にでもかけられたように、一点を眺めていた・・・

そんな時、頭の中のどこかで「ここから出ろ!」と誰かが叫んだ!

それは、確かに聞こえたが、声とも、音とも思えなかった。

その「ここから出ろ!」が頭に感じて、我に戻り、押し出されるように車外に出た…

ホームに足をかけた瞬間、後ろにあった電車がイリュージョンを観ているかのように消えていた!

身体全身に恐怖を感じ、悪寒が走った。


時計の針は十二時を過ぎようとしていた、通常より長針の動きが速く長針と短針の重なりがわずかに思えた。

秒針が無い時計だからだろうか?

怖れをこらえて周囲を見渡してみた。

向こう側のホームに電車が着いていた、誰も降りる様子がない。

殺風景な駅で何処なのかもわからない。

重い足を進め改札口に向かった。

改札口にはひと気がなく、出口付近に小部屋があることに気づいた。

ノックをしてドアノブを回したが、しっかり鍵がかかっていた。

ドアの外から話し掛けてみた。

「ここは何処ですか?」

「電車はあるのですか?」

すると…
「もう電車はない・・・」
とドアの向こうから無機質な声で誰かが答えた。

人の声か?

録音された声か?

はっきり聞き取れない、食道から胃へと不快な物が通過したような感じがして…

それ以上の事を聞く気になれなくなり…

その場に座り込んでしまった。

「どうすればいいんだ・・・」持ち物は、左のポケットに携帯、右のポケットにはハンカチがあり…

カバンは電車に忘れたようだ…

汗ばむ手をハンカチで拭い、家に電話を掛けてみたが…

反応が無い?

何度も何度も繰り返しかけたのだが…

発信音さえ聞こえて来ない?

携帯のアンテナは三本立っていたが…

目を凝らしてアンテナを見るとオレンジ色の三本の棒が上下、左右に伸縮している!

「な、なんなんだ・・・!」

その滑稽な動きからも此処は違った次元では無いかと感じた?

「ど、ど、どうしたんだ・・・」

焦りと怖れが心の中で…
「どうしたんだ!どうしたんだ!」を繰り返す。

俺は、この恐怖から逃れたい為に言い聞かせていた。

それは、自分を慰めるかのように、ここまでのことを検証していた。

周りを見てもわかるが、横浜から急行で菊名まできて各駅に乗り換えた、酒を飲んではいたが、酔った感覚はなかった。

それにしては時間がかかり過ぎている。

九時前に横浜から電車に乗ったことをはっきり覚えている。

そして乗り換えた電車は渋谷行きとわかっていたが・・・・

こんな場所に来るはずがない!

何回か飲み過ぎて寝過ごし、渋谷や自由が丘で気が付かことがあったからだ。

果たしてここは・・・・・

自分で自分を正当化しょうとしている。

まったく意味のないことだが、焦りからこんな言い訳的な独り言を呟いていた。

「とにかく落ちつけ、とにかく落ちつけて」と自分に言い聞かせて納得させていた。

それにしても重苦しい空気を感じる・・・

改札口の向こうは、真っ暗で何があるのか、想像もつかなかった。

ただ身体が震えている。

「何だこの感覚は・・・・」わからない、とてつもない恐怖が近づいている事を察知していた。

明るくなるまで動く気になれない、今、動けば自分を全て失ってしまうような気がしたからだ、生暖かい風が鼻孔に入り強烈な不快感を感じた。

それは、物凄い臭いであるそのため、ハンカチで鼻と口を覆った。

「なんだこのニオイは・・・」言葉を発した瞬間、呼吸を止めたくなるほどの悪臭だ。

今迄で、嗅いだ事がない強烈な何かが腐敗したような、発酵したような臭いが、僅かに開いた鼻孔から身体の中に浸透していく、胃が急激に収縮した瞬間、固定物が口にもどりむせ返るように嘔吐していた。

その臭いを追い出すかのように、吐き気が止まらず容赦なく胃と咽を締め付ける。

涙と共に嗚咽をあげ、むせ返しながらやっと呼吸をしていた。

その場に座り込み、膝を抱え丸くなり、訳のわからい恐怖に怯えていた…



薄っすらと明るくなり始めてきた、足取りは重く動き出す気に慣れ無い。

改札口を出るには、キップを渡す…

などをするのだが…

特に何する事なく出られたのだが…

訳のわからない重苦しい空気…
理解できない現実…
まだ頭も身体もこの世界?
を受け入れられないでいた。

「なんでこの世界に来てしまったのか?」何度も同じことばを繰り返していた。

どう考えても答えが出ない?

訳のわからないこの世界、全てを認められない自分がいた。

俺はいつもくすぶりながら生きてきた。

この場に居なくても、全てを認めたくなかった。

認めるのが怖くて逃げていた…

「何処に居ても同じだなぁ…」

そんな独りごとを口走ると、昨日の宴会が思い出された…

期がかわり桜も散った頃、毎年恒例になっている。

職場行事の幹事交代の為の宴会である。

年が経つに連れ、世代交代が余儀なくされ、仕事への情熱が薄れていたことに、気づき初めてたころから…

この宴会はいつもしらけたものだと捉える様になっていた。


不満の捌け口をぶつけられず、聞いてもらえそうな人に、愚痴っていた。

上手くいかない、嫌な事ばかりをよく考えるようになっていた・・

チャンスを生かせず出世を逃し、願望意識だけが強くこれまでやって来た・・・

俺はもうじき四十九を迎えようとしていた・・・

ふと昨日のことが頭を過ぎった。

…「かみさん、心配してるだろうなぁ」

「帰りたいな…」
そう切実に思った。

訳もなく涙が流れていた。

それは、今の寂しさと今迄の自分への甘さの後悔からか、心が虚しさに占領され、涙が止めどなく流れていた。

そんな時、穏やかな口調で誰かが俺に囁いた・・・

「逃げるな、逃げるな」・・・

怖じ気づいている気持ちを断ち切るかのように、今度は強い口調で…

「逃げるな、逃げるな」の声が心に響いた・・・

確かに親父の声だった!

「逃げるな」は生きて居た頃の親父の口癖だ!

俺が弱気になると、この言葉で諭された。

俺の何処かで、何かがふっ切れたようなきがした・・・・・


今までの俺とは違う何かが覚醒していた。

こんな所に来てしまって・・・・

怖い、物凄く怖い・・・・

しかし・・・ここで逃げても、どうにもならない、何がなんだかわからない…

この世界!

この次元!

もしかすると俺は死んでいるのか?

まあ、どうでもいいか、気力が腹の底から湧き上がって来た!

もう逃げない全て観てやろう。

自分の中の好奇心が年甲斐もなく蘇った。


改札口には誰もいない無人である。

時間が早いせいか電車はまだこない。

果たしてこの電車は利用されているのだろか?

改札口は二階にあり出口までの通路には窓がない、ホームは高い塀で駅内以外の景色がよくわからない。

階段を降りると不思議と足の運びが速くなった様な気がした。

「気がはやり加速がついたのか?いや!違うぞ」

手足の動きがいつもより、せわしなく気持ちより先に進む。

深呼吸をしてから足を出す前に「右足、左足・・・」と確認してから歩いてみた。

何とかいつもと同じように歩くことが出来た・・・・

「まあ何とかなるか」そう独り言を呟いた。

この駅についてから、いつもより時間の経過が早く感じる。

それは、昨日から今朝まで眠らずにいたが、夜が明けるまでそんなに時間が経った気がしない。

眠気が襲ってこないのだ。

時計を見る、相変わらず長針が進むのが早い、もうすぐ六時になろうとしていた。

階段を下りきり地上に着く、すると目の前には、想像以上の光景が待ち構えていた・・・・・