人生の中で一番思い出にある料理と問われたら、私はフレンチトーストと答えると思う。他にもうに丼とか美味しいものはいろいろ食べたはずだけど。
あれはまだ幼稚園だったか小学生低学年の頃だったか、ある日の昼食に母がフレンチトーストを作ってくれた。何気に口へ運ぶと、甘くて、パンがとろっととろけていて、不思議な食感だった。なにこれ美味しい、と驚いた。
普段こういったものをほとんど作らなかった母。貧しい町で生まれ育った母がこんな洒落たものを作るとは。本を読んだか、学校で習ったか、どっちだったかは忘れた。
それ以来好物になったが、滅多に作ってくれることもなく、また家も出たのでしばらくは食べる機会はなかった。
会社を退職し、就職活動も上手くいかず、実家へ連れ戻されたとき、スーパーで荷出しをしていて、朝番が終わって帰るとちょうど昼になる。そのときよく作ってくれた。しかしいつも父が居間にいて居心地も悪く、味もよく判らないまま食べていた。父にはその頃憎まれていたと思う。
そしてまた家を出てもう15年以上は経っただろうか。父ももう亡くなった。あの幼い頃のように、また美味しいフレンチトーストを食べたいな、と思う。あの夢のような味を。
ちなみに一度ドーナツも作ってくれたことがある。これは幼稚園の頃ではっきり覚えている。形を作るのも難しいだろうに。そして出来上がりは焦げていて、母はごめんねえ、と言っていたが私は美味しい美味しいと食べた。焦げているところも味だ。
しかし、それ以来ドーナツは作ってくれなかった。
あれはまだ幼稚園だったか小学生低学年の頃だったか、ある日の昼食に母がフレンチトーストを作ってくれた。何気に口へ運ぶと、甘くて、パンがとろっととろけていて、不思議な食感だった。なにこれ美味しい、と驚いた。
普段こういったものをほとんど作らなかった母。貧しい町で生まれ育った母がこんな洒落たものを作るとは。本を読んだか、学校で習ったか、どっちだったかは忘れた。
それ以来好物になったが、滅多に作ってくれることもなく、また家も出たのでしばらくは食べる機会はなかった。
会社を退職し、就職活動も上手くいかず、実家へ連れ戻されたとき、スーパーで荷出しをしていて、朝番が終わって帰るとちょうど昼になる。そのときよく作ってくれた。しかしいつも父が居間にいて居心地も悪く、味もよく判らないまま食べていた。父にはその頃憎まれていたと思う。
そしてまた家を出てもう15年以上は経っただろうか。父ももう亡くなった。あの幼い頃のように、また美味しいフレンチトーストを食べたいな、と思う。あの夢のような味を。
ちなみに一度ドーナツも作ってくれたことがある。これは幼稚園の頃ではっきり覚えている。形を作るのも難しいだろうに。そして出来上がりは焦げていて、母はごめんねえ、と言っていたが私は美味しい美味しいと食べた。焦げているところも味だ。
しかし、それ以来ドーナツは作ってくれなかった。