思えば、メンタル崩壊して薬を服用するようになってから、感受性が鈍くなったと思う。
 会社を退職し、求職活動しながら合間にいろいろな所へドライブに行っていた時期があった。
 結構景色の良いと言われる所や、憧れの秘境駅など巡ったのだが、今ひとつピンと来ないというか、感動とか感激がなかった。
 例えば北海道、小樽の西の方、積丹半島に神威岬という所がある。観光客も多く訪れる名所だ。そこに毎日通っていたこともある。通っていたから感激も薄くなったのかもしれないが、ただ海、積丹ブルーは綺麗だな、と思うくらい。
 音楽も、本当に良いなとしみじみ思うことがかなり減った。音楽をやっている者には辛いことだ。ほどなく楽器を辞め聴き専になったが、若い頃感じたものがなくなっている。

 精神に異常をきたしたり、精神に作用する薬には感受性が鈍くなるという副作用があるようだ。特に炭酸リチウムは酷かった。何も感じない。これは恐ろしかった。その他の副作用もあり止めて、激鬱の後ラモトリギンに落ち着いた。炭酸リチウムに比べればマシだが、それでもやはり鈍っている気がする。
 メンタル崩壊と薬というのは怖いものだとしみじみ思う。普通に近づくような生活は出来るようになるかもしれないが、失うものが大きい。
 美しいものを見て美しい、感動的な映画を観て感動する、こういった当たり前のことって、地味に大事なことなのだなあと思う。
 ちなみに私が人生で一番感動、美しいと思ったのは、大学の頃、友人の車で(違う)友人の赴任先行ったとき、峠を越して少し降りたところで休憩して、車から降りたとき観た星空だ。本当に星が降ってきそうな夜空とはこういうことなのだと実感した。