安井かずみがいた時代 | 野村孝博のブログ

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 島崎今日子著「安井かずみがいた時代」を読みました。著者はジャーナリストで、ジェンダーをテーマに幅広し執筆活動をされている方だということです。以前読んだ加賀まりこ著「純情ババァになりました。」の類書としてご紹介頂き手に取りました。

 

 読んでみたわけですが、安井かずみって方、初耳でした。いや、正確には「純情ババァになりました。」で初めて聞いたのですが、加賀まりこの親友で作詞家なんですね。「危険なふたり」、「わたしの城下町」、「よろしく哀愁」といったところが代表作だそうで、この辺りでようやく知っているというレベルです。本書は、著者が安井かずみを取り巻く人物に取材して、それを連載したものを集めたものでした。

 

 インタビューされているのは林真理子、コシノジュンコ、かまやつひろし、吉田拓郎といったメンバーで、私が知らない名前の方もたくさんいらっしゃいましたが、説明されるとやっぱり凄いと思えるような方ばかりでした。

 

 序盤は、安井かずみについて、何とも感性の強い、才能にあふれた方だという印象を持ちました。大ヒット曲「わたしの城下町」を、加賀まりこのいる前で20分で書き上げたなんて言うエピソードがあり、これには驚かされました。それだけの才能で4000曲書いたとありましたが、加藤和彦氏と結婚してからは、加藤氏の曲にしか詩を書かないなんて言うスタンスになったといいます。そんな才気あふれる一方で「スケジュール帳に少しでも空白があることが耐えられない。一人でいると不眠症になり、貧血と失神を繰り返し、生きてる事さえ自棄しそうになる―」と自伝につづっていたそうです。才能ある方って言うのは、その才能によって苦しんだりしてしまうのでしょうね。

 

 加藤氏と安井かずみの結婚生活についても、序盤は「理想の夫婦」みたいなことが多く書かれているのですが、後半は夫婦の姿に疑問を呈するというか、危うさを感じている方の意見もありました。そんな夫婦像について、最後に渡辺プロダクションの名誉会長・渡邊美佐氏が「二人の理想の世界を作り続ける為に、お互い相手に気を遣いあうことを第一に優先したのではないかしら」と言っていたのですが、それが正解で、そうした気遣っているようなところ見た人は危うさを感じたりしていたのでしょう。

 

 安井かずみと加藤和彦は再婚同士、安井が55歳の時に肺がんで亡くなると、一周忌を待たずに加藤は別な女性と結婚したといいますから、この辺りはちょっと一般の方には理解しがたいところですね。しかし、周囲で夫婦を見てきた方々は皆受け入れているようでした。そうしたことも含めて、当たり前の話ですが、人間というのは見る角度によってさまざまな顔をするのだということを、改めて感じた本でした。