「多額献金」の“被害者”を想う
「彼」はどうすればよかったのか…
いくら考えても納得がいかない――。
一国の元総理(安倍氏)を襲って死に至らしめた男。
「悪人」であることは言うまでもない。ただ、「彼」
をそこまで追いやったのはいったい誰だ! その動機
を誘引したものが、おのずと見えてくる。
7月16日付の朝日新聞朝刊社会面に掲載された「彼」の伯父さんによる説明――つまり、奈落の底に落ちていくような一家の動静は、涙なくしては読めなかった。
これを「宗教」と呼べるのだろうか。こんな「宗教」があっていいのだろうか。
………………………………………………………………………………………………………
多額献金「食べ物ない」
容疑者、海自在籍時に自殺図る 伯父説明
安倍元首相が銃で撃たれた事件で、殺人容疑で送検された山上徹也容疑者の伯父(77)が15日、報道各社の取材に応じ、母親が入信直後から教団に多額の献金を繰り返し、3人の子どもたちが食べる物がないほど困窮していたと説明した。容疑者は20代前半で自らに生命保険をかけて自殺を図ったこともあったという。
伯父によると、奈良地検は12、14日に山上容疑者の母親に事情を聴いたという。母親の体調について「疲労困憊の状態が続いている」と話す。
伯父によると、容疑者の父親は1984年に急死。母親は91年、宗教法人「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」に入信した。伯父は「直後に2千万円、すぐ後に3千万円、さらに1千万円を献金した」と説明。夫の生命保険が原資だったという。
98年には母親の父である山上容疑者の祖父が亡くなった。祖父から相続した土地を売却するなどし、母親はさらに約4千万円を献金したと伯父に伝えている。ほかにも数十万円~100万円の献金を繰り返し、2002年には自己破産した。献金の総額は1億円に達したという。母親は伯父にも献金するよう求め、何度も自宅を訪ねてきたため「お茶をかけて帰らせたこともある」という。
一方、同連合の説明では母親は今も会員という。また同連合は、「母親に05年から14年までに5千万円が返金された」とする文書を朝日新聞などに出している。
母親の入信後、子どもたちの暮らしは激変した。教団活動で家を空けることが多くなり、容疑者の兄から「食べるものがない」と助けを求められたこともある。すしを持っていったり、缶詰を送ったりしたこともあったという。
山上容疑者は高校卒業後、公務員試験対策の専門学校へ、妹は大学へ進学。母親は入学金や学費を払えず、伯父が負担した。しかし、援助を続けても教団への献金に使われてしまうと考え、援助を打ち切っていた時期もある。
伯父によると、山上容疑者は専門学校を中退。02年に任期制の海上自衛官になったのはお金を稼ぐためだったという。伯父は05年1月、海上自衛隊から容疑者が自殺を図ったと連絡を受けた。伯父は海自を通じて理由を聞いた。「人生がめちゃくちゃになった。困窮している兄と妹を助けるため、自らに生命保険をかけて自殺しようとした」と話していると伝えられた。入院中の山上容疑者を見舞ったのが最後の対面という。
…………………………………………………………………………………………………………
<注>文中の太字は、のむらりんどうによる。
+
「人生がめちゃくちゃになった。困窮している兄と妹を助
けるため、自らに生命保険をかけて自殺しようとした」
――<善悪二元論>を超えて考えるとき、私は
涙がとまらない。
「襲撃」は論外です。しかし、この男がとても悪人だとは
思えない。
『歎異抄』はどう答えてくれるでしょうか。
「宗教団体」を見分ける方法は、ただ一つ。
<信者から集金する団体か、そうでない団体
か>である。
(記 2022.7.16 令和4)
