世間の注目を集めた「池袋暴走事故」の飯塚幸三被告に対して
禁錮5年の実刑判決が9月17日、確定しました。
9月18日の朝日新聞朝刊は次のように報じました。
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池袋暴走事故の実刑確定
「罪と向き合う時間にして」 禁錮5年 妥当性は
東京・池袋で2019年、暴走した乗用車で母子が死亡、9人が重軽傷を負った事故で、車を運転した旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(90)に言い渡された禁錮5年の実刑判決が確定した。検察と被告が期限の16日までに控訴しなかった。飯塚被告は近く収容されるとみられる。
妻の真菜さん(当時31)と長女の莉子ちゃん(同3)を事故で失った松永拓也さん(35)は17日に会見し=写真、飯塚被告から直接の謝罪はないと説明したうえで、「(被告が)罪と向き合う時間にしてほしい」と語った。判決確定の知らせを聞き、仏壇に「終わったよ。2人でおだやかに過ごしてね」と伝えたという。
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また、同日の産経新聞朝刊にはこう書かれています。
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遺族「過失認めるのが贖罪」
会見で複雑な心境吐露
飯塚被告の実刑判決が確定したことを受け、池袋暴走事故で亡くなった松永真菜さんと莉子ちゃんの遺族が17日、東京都内で会見を開いた。「安堵の気持ちもあるが、自身の過失を認めてほしかった」。真菜さんの夫、拓也さん(35)は複雑な心境を吐露した。
公判で、被告は一貫して車の故障を主張し、自らの過失を認めなかった。拓也さんは会見で「知りたいのは、飯塚氏が過失を認めた上での控訴断念かということ」と強調。「今のところ『過失だと思う』との言葉は聞けていない。そのたった一言で遺族はどれほど救われたか…。刑務所で過失を素直に認める日が来れば、本当の意味での贖罪の始まりだ」と述べた。
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禁錮5年――。「事故の重さと潔さを欠く被告の態度を見れば
当然のこと」という声がある一方で、「90歳という年齢を考え
るとかわいそう」という声も聞こえます。
私としては、どちらの声も理解しますが、ただそれは、「事故の結果」に対する態度でしかあり得ません。「自動車事故は未必の故意」であるという意識を社会全体で共有しない限り、問題(事故)は永遠に解決しないでしょう。
「90歳にもなって運転をすれば他人を殺傷する恐れがある」という蓋然性を無視して運転を続ける神経は、まともな人間のすることではありません。これをはっきりと意識するのが大人の社会です。出来ないのは子供です。
“利己的な便利さ”を追求することだけに汲々とし、心身の衰えを客観的に見ることが出来なくなっていたとしか言いようがありません。
本人、周囲の人間、行政、車両生産者……が、他人事ではなく、己の責任として肝に銘じなければ……事故は永遠になくならない。
(記 2021.9.19 令和3)