週刊誌の記事を読んで、思わず泣いてしまいました――
いい歳をして、と言われそうです。半世紀にわたって週刊誌の記事を
読んできましたが、涙を流したのは初めてです。
けさ(2020年3月18日)、朝日新聞朝刊の広告欄を見て、すぐさま近くの書店に駆けつけました。雑誌コーナーに向かうと、一冊また一冊と『週刊文春(3月26日号)』を手にする男たちがいました。最近はめったに週刊誌を買うことのない私ですが、すぐさまそばの喫茶店に入って読んだのです。
<森友事件で自殺した元財務省職員の遺書全文公開>
(記事から、見出しと前文を引用します)
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森友自殺 財務省職員 遺書全文公開
相澤冬樹(大阪日日新聞記者)
妻は佐川元理財局長と国を提訴へ
「すべて佐川局長の指示です」
2年前の3月7日、近畿財務局職員・赤木俊夫氏(54)が自ら命を絶っ
た。安倍昭恵夫人が関与する小学校への国有地格安払い下げが国会で問題
となる中、起きた文書改ざん事件。真面目な公務員は、なぜ公文書を改ざ
んし、そして死を選ばなければならなかったのか。「財務省が真実に反す
る虚偽の答弁を貫いている」「最後は下部がしっぽを切られる」。A4で
7枚の痛切な「手記」やメモには、その経緯が克明に綴られていた。「隠
蔽の安倍政権」の真実がついに明らかに――。
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ここへ来るまでに、私は2017年3月25日にこのブログで
森友問題を取り上げました。要点は以下のような内容です。
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♦ニュースから(18) “籠池騒動” 「問うべきは財務大臣の責任」
木村草太氏の慧眼
一民間人の無謀とも思える「小学校建設計画」が、世間を騒がす大問題
に発展しました。
そこには、ふたつの共鳴箱があったのです。ひとつは「一民間人と首相
夫人による『瑞穂の国・国粋夢譚』」であり、もうひとつは「政治家と官
僚の『忖度・馴れ合い』」です。
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つまり、今回の<遺書全文公開>は、森友事件のもうひとつの問題、「政治家と官僚の『忖度・馴れ合い』」から出て来たものです。
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財務省に所属する一人の公務員・赤木俊夫さん(当時54)が「公文書改ざん」という許されざる行為に手を染めたのです。しかし、それはみずからの意志でやったのではなく、上からの指示でした。抗いながら、その“犠牲”になったのです。責任感の強い彼はやがてみずからを失うほどの精神状態に陥り、命を絶ったのです。それは、死をもって組織の非情を訴えた「魂の物語」でした。
彼は「手記」に書き残していました。「気が狂うほどの怖さと、辛さ」
これほどまでに、ひとりの人間(一人の下級公務員)を苦しめた「巨悪の実体」を許すことは出来ません。われわれ国民は真実を知り、公文書改ざんに関係した者はそれ相応の責任をとり謝罪しなければなりません。日本の将来のために。
赤木さんは、手記の中でこう言っていました。「最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ」――。公務員とは何か。職制とは何か。仕事とは何か。国家とは何か。ひとを窮地に追いつめ自ら生き延びるとはどういうことか。
私は、みずから命を絶った赤木さんが哀れでならない、かわいそうでならない。そして、相澤冬樹記者の心のこもった文章に、私は泣いたのです。相澤記者の労を無にしてはならない。この事件はまだ終わっていません。
(記 2020.3.18 令和2)