Δ短歌 実作  歌誌「ハハキギ」作品 ―14― | のむらりんどうのブログ       ~君知るや ふたつの意識~

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2002年9月22日の早朝。目覚めて布団の上に起きあがった瞬間、私は「光の玉(球)」に包まれたのです。以来、「自我」(肉体と時間に限定されたこの世に存在する私)と、「真我」(肉体を超えて永遠に宇宙に実在する私)の、ふたつの意識を持って生きています。

 

 

 歌誌「ハハキギ」作品 ―14― (昭和64年・平成元年前期 1989

 

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[1月号]

 

 若きころ揃へそびれし全集の末の巻ありしばし手も出ず

 

 開きたるページの上に一枚の枯れ葉落ち来て栞のごとし

 

 原稿はすべてワープロ打ちとなる日の近づきし新聞社内

 

 俺だけはパソコンなぞは弄らぬと宣言するも目の前に機器

 

 民の世へ時代は大きく変はれども陛下の記事に尖らす神経

 

 朝な夕なテレビに映る天皇の容体真似る我が子を責めず 

 

[2月号]

 

 夕餉終へ歌をうたひてほろ酔いの体ほろほろ木枯らしの街 

 

[3月号]

 

 パネラーの口には出来ぬ天皇制廃止を言ふはビルマ留学生

 

 すつきりとしたりと言へば言へなくもなくて寂しき屋台なき道

 

 年ごとに変はれるものの一つなり注連飾り減る家々の門

 

 正月を仕事に向ふ我が影を移しつつゆく川に沿ふ道

 

 清らかに掃かれし処と散らかりし処そのまま正月の朝

 

 楼蘭に落語に歌に駅伝にテレビは正月玉手箱のごと

 

[4月号]

 

 行幸の列車を橋より見下ろして覗き込みしは高校生のころ

 

 社に着けばすでに崩御の報せあり昭和最後の日の編集局

 

 たちまちに予定原稿解除され一面二面はや組まれたり

 

 てきぱきと夕刊つくる同僚の顔に崩御の悲しみはなし

 

 社史によれば泣きつつ記事を受けしとふ大正天皇崩御の時は

 

 早朝の地下に響ける輪転機号外夕刊いま刷られゆく

 

 参葬にこだはる英国三日間服喪のキユーバ驚きぬ
 

[5月号]

 

 一駅も二駅もまだ放牧の柵のみつづく雪の北海道

 

 どこまでも歩けど見えぬ寺の屋根札幌の街ビルのみにして

 

 四五日の天気を見れば大方はあしたに晴れて昼は大雪

 

 家離れ単身生活を慰むるは朝の食事の梅干しの味

 

 外は雪部屋の中ほど暖かく札幌の夜の寮の灯の下 

 

[6月号]

 

 美しき空を歌へる新聞の短歌欄につられ空を見上ぐる

 

 白樺は木叢をなしてひとところ雪の原より生えたる如し

 

 啄木の像もこの日は不遇なり大通公園に居並ぶ雪像

 

 酔客の足もふらふら氷像にネオン映れるススキノ通り

 

 このやうな造作をするうちは平和か自衛隊内に在る雪まつり