12月4日()

「妊娠・出産・子育てにやさしい社会をつくろう! ~フィンランドのネウボラから学ぶ~」 

という内容で国際シンポジウムが、東京都港区立男女平等参画センターリーブラホールで開催されました。




「フィンランドのネウボラ」を昨年7月に、神本参議院議員から紹介されました。もちろん初めて聞く言葉でした。その後、2月に、枚方市・堺市・八尾市の三市長さんがシンポジストになって、「大阪から切れ目のない妊娠・出産・子育て支援を進めるシンポジウム」があったことを後から知り、残念だったのですが…

今回、ネウボラについて専門的にお話を聴く機会があったので、東京まで行ってきました。



記念講演の講師予定だった、トゥオヴィ・ハクリネンさん(出産子どもネウボラ担当)が体調不良で、長期フライトにドクターストップがかかったということで、当初の内容を一部変更され、ビデオレターで、ネウボラを紹介されました。1920年代初頭、妊娠期から周産期での母子保健への民間グループによる取り組みがネウボラの出発点であったこと。民間の取り組みから出発したネウボラが、当初1922年の8か所(ヘルシンキ首都エリア)から1944年には300か所へと増え、成果が認められて1944年に制度化されたこと。これによって、市町村自治体には出産ネウボラと子どもネウボラの設置が義務付けられ、継続されていく中で、さらにサービスが拡大されていること。現在は、子どもの健診だけでなく総合健診として、家族全員の健診を行い、親の支援を含む制度の拡充を行おうとしていること。問題を抱えている家族はサービスを受けていない傾向があるが、ネウボラサービスは、妊娠判明時から6歳まで担当するネウボラおばさんが固定されていて、相談するのにハードルが低く、子どもの健康と幸せの支援は、両親の健康と幸せが不可欠である、と強調されていました。


トゥオヴィ・ハクリネンさんの代わりに、記念スピーチ「赤ちゃん ようこそ! フィンランドの子育て家庭の今」と題して、フィンランド大使館参事官 マルクス・コッコさんが、20141031日に生まれた息子さんを巡ってネウボラの良さを話されました。

妊娠が判明したらすぐネウボラに連絡。健診も、産前両親学級も、出産する病院の事前見学も二人で行ったこと。産後6日目に、ネウボラおばさんが家に来て、様子を確認してくれたこと。育児も両親がともに主体的に担っていることをとても楽しげに話されました。



基調報告「ネウボラー対話、共感、信頼の輪」高橋睦子さん(吉備国際大学保健医療福祉学部教授)
フィンランドを主要な研究フィールドとされているので、ネウボラについても日本での第一人者となります。ネウボラサービス制度について歴史も含め、具体的に説明されました。
ネウボラサービスが制度化されていること、継続していく中で、さらに必要になってきたことが、法律に盛り込まれていっている、ということ。すべての女性が、妊娠判明時からネウボラに登録し、出生届は分娩した機関から自治体役所へ連絡・登録を行うので、所在不明の子どもが存在しないこと、にも感銘を受けました。「子ども・子育て家族にやさしい社会」が持続可能な社会であり、ワークライフバランスが不可欠であることも強調されました。そして、一人目が楽しければ、二人目も産みたくなるので、フィンランドの出生率は低くなっていないってことですね。もちろん、健診も分娩も無料だそうです。象徴的な育児パッケージが展示されていましたので、カメラに収めました。


コメント「日本の緊急課題―妊娠期からのひとつながりの支援に向けて」佐藤拓代さん(大阪府立母子保健総合医療センター 母子保健情報センター長)

妊娠・出産・子育てと現行のサービス・支援について、まず紹介され、サービスにつながらない(妊婦健診を受けない)出産には、大きなリスク、子どもの健康・子育ての難しさが伴うこと、サービスにつながらない人をいかにサービスにつなげるかが、日本の課題であることを述べられました。

すべての妊婦の中には、妊婦健診未受診、相談できない望まない妊娠、支援者のいない若年妊娠等が存在することを把握し、負担を生じさせないタイムリーで密度の濃い支援を行うことが重要であることを強調されました。相談につながらない人には、相談する力が育っていない現実があること、だからこそ、どのようないきさつの妊娠でも、生まれてくる命はかけがえのないものであることを肝に銘じ、妊婦のすべてを受け入れるひとつながりの支援を強調されました。

「ひとつながり」は、「一つ」と「人」、両方の意味がある、とのことでした。



総括討論 ファシリテーター 榊原智子さん(読売新聞東京本社調査研究本部主任研究員) 討論者 高橋睦子さん・佐藤拓代さん

短い時間でしたが、受けた質問からさらに深めた話を聴くことができました。


妊娠・出産・子育てにやさしい社会をつくろう!

フィンランドのネウボラから学ぶことは本当に多かったです。すでに取り組んでいる自治体もあります。一人ひとりの生き方が尊重される、子どもの育ちを確実にサポートできる、そんなまちづくりを進めていきたいですね。

日帰りの東京研修となりましたが、ネウボラについての理解を深めることができ、満足感いっぱいで帰阪することができましたよ!!



ネウボラ(neuvola)という言葉、フィンランド語でアドバイス(neuvo)する場所(la)という意味で、妊娠期から就学前までの子どもの健やかな成長・発達の支援はもちろん、母親、父親、きょうだい、家族全体の心身の健康サポートも目的としている。担当制になっているため、基本的には妊娠期から子どもが小学校に上がるまで、同じ人(通称「ネウボラおばさん」)が継続的にサポートをするので、お互いに信頼関係が築きやすく、問題の早期発見、予防、早期支援につながっている