恵方巻がスーパーの店頭にずらりと
並びはじめると、あぁ今年もこの季節か
と胸がそわそわしてくる。節分? いやいや
そんな由緒正しい行事の話ではない。
私が待っているのは、恵方巻そのものではなく・・・
そう、半額シールである。
半額シールの魅力は、宝探しに似ている。
定価ではとても手の届かない高級品が、スーパーの
夜の静かな空気の中で突然「あなたにも買えるよ」と
微笑みかけてくる。あれほど心が躍る瞬間が
あるだろうか。もはや半額シールが貼られた商品を
買うのではない。半額になったこと自体を買っている
といっても過言ではない。
そんなわけで、今年も夜のスーパーへ向かった。
店内には恵方巻が色とりどりに並び
売れ残ったものたちがしんしんと私を待っている
(ような気がする)。
しかし、そこで思いもよらぬ壁が立ちはだかった。

一本3000円の高級恵方巻。
それが見事に半額になって、1500円。
……1500円。
いや、確かに半額なのだ。半額であることには
間違いない。しかしである。半額になったところで
私の手はちっとも伸びない。というか、むしろ
縮こまっている。
こうして人は気づくのだ。
「半額だから買う」のではなく
「半額で安く感じる価格帯が存在する」ということに。
3000円が1500円になっても、私の中では満場一致で
「高い」という結論になる。むしろ「この時期だけ原価の
数倍に設定しているのでは……?」という邪推すら
芽生えてくるのだから、人間の感情は実に複雑である。
結局その日は、ほどよく売れ残ってほどよく安くなっていた
普通の恵方巻(元値780円→390円)を選んだ。
私の中で「お買い得」の琴線に触れるのは
このくらいの可愛げのある数字なのだ。
家に帰って恵方を向き、静かに恵方巻をかじった。
別に願いごとをするつもりはなかったのに
不思議とひとつだけ思い浮かぶ。
「来年も、いい半額シールに出会えますように。」
