クルレンティス&コパチンスカヤの尋常でないチャイコフスキー | 興味の赴くままに

興味の赴くままに

クラシックのレコード音楽鑑賞と山歩きと野茂投手が好きで歴史の進歩を信じる壮年が、興味の赴くままに綴るブログです。
特に好きなのは、音楽ではモーツァルトの全部、ベートーヴェンとブラームスの交響曲、山では剣岳と鳥海山。
そして、スポーツでは野茂投手です。

シベリアの田舎町に出現して日の出の勢いで世界の楽壇を駆け昇りつつある、ギリシャ出身の指揮者テオドール・クルレンティスと彼が率いるオーケストラ、ムジカエテルナが、これまた世界で脚光を浴びているモルドヴァ出身のヴァイオリニスト、パトリツィア・コパチンスカヤと共に初来日した公演の、オール・チャイコフスキー・プログラムを聴き、これまで感じたことのなかったチャイコフスキーの深みを実感させられました。
クルレンティス

まずはヴァイオリン協奏曲。

第一楽章のヴァイオリンの入りから、極上のビアニシモに、これ以上ないようなスローテンポで、触れば壊れるような繊細且つ異常なまでに表情付け豊かな演奏が展開されました。

コパチンスカヤの奏でる旋律の一音一音の伸縮と強弱の付け方がとにかく独特です。

この通俗名曲から、嘗て聴いたことのない調べを紡ぎ出すそれが、恣意的とは全く感じさせず、この曲のこの部分の魅力はこうだったのか❗と気付かされました。

この独奏者の意思に、ぴったり寄り添う指揮者とオーケストラの伴奏も特筆物!
指揮台を置かず楽員と同じ高さでの指揮でした。

三つの楽章全てがこんな調子で進み、45分以上を要しました。

待ち焦がれた期待に背かない快演に、終わるやブラヴォーの大嵐!

それに応え、コパチンスカヤはアンコールを何と3曲も弾いてくれました。
それも一筋縄のアンコールではなく、初めにミヨー作曲のクラリネットとの合奏、続いてリゲティ作曲のヴァイオリン二重奏、そして最後に「現代曲はお好きですか?」と会場に呼び掛けて、奇抜な奏法とナンセンス言葉を発しながら、1996年に作曲されたというホルヘ・キョン?なる作曲家のユーモラスな小品で締めくくられました。
コパチンスカヤのアンコール190211 クルレンティスのアンコール190211

ここまでで1時間以上❗

後半は、交響曲第4番。指揮台に立っての指揮です。

第一楽章途中までは、意外に?普通の演奏が続きましたが、再現部辺りから弱音の旋律をじっくり膨らませる情感豊かな演奏になり、ヴァイオリン協奏曲の伴奏で受けたのと共通する感銘を得ました。

第二楽章ではそれが際立ち、この曲がこんなに深い情緒に満ちた感動的な作品だったのだと、認識を新たにさせられました。
このコンサートの白眉と言える演奏です。

第三楽章の弦のピツィカート合奏も素晴らしく、第四楽章の高揚感も十全でした、
実は、曲の最後に向けて煽りまくるのではないかと予想していたのですが、金管の音を割ったり無用にテンポアップしたりすることは一切無く、透明感が際立つ演奏だったことに大いに感心しました。

と言うのも、この演奏の楽器編成は、弦が16,15,14,14,9にホルンが6という重厚なもの(他の管楽器は2本ずつ)にもかかわらず、大人数の弦が分厚さを全く感じさせず、むしろ軽くて透明感がある響きに聞こえたからです。

そのコントラバスはドイツ式の弓が主流のロシアの楽団にあって、ムジカエテルナでは9丁のうち、5丁がドイツ式、4丁がフランス式、というのも面白いことでした。

クルレンティスの指揮は、タクトを持たず、抑制された身振りで、どんな強奏場面でも腕を肩より上に振り上げることはありません。
両腕をしなやかに動かし、特に左の腕と手指の動きが曲の表情作りに直結しているようです。
しかし、交響曲第3楽章中間部では、しばし腕の動きを止め、目と微妙な首の動きだけで指揮していたのがとても印象的でした。

終わるや再びブラヴォーの大嵐。
何度も答礼を重ねた後に演奏されたアンコールは、それ用のピースではなく、幻想序曲「ロメオとジュリエット」。15分以上掛かる、本割り用の曲です❗

勿論この演奏も前の2曲に劣らない好演でした。

それやこれやで、終演時刻は、開演から2時間40分後になってしまいました。

大いに感動したので、記念に会場でCDを買いサイン会に参加することに。

そのサイン会、今まで見たことのない長蛇の列ができていて、1階から始まった列は私が並んだ時には最後尾が3階の通路でした!

ヴァイオリンのコパチンスカヤと指揮のクルレンティスが並んでサインする予定のところ、あまりに長い列ができたためか、コパチンスカヤが列を巡って来てくれて先にサインしてくれました。

お陰て、二人とそれぞれ長めの会話をして感動を伝えることができました。

この演奏会、演奏自体の素晴らしさに加えて、他の楽団のコンサートでは見掛けないことが色々ありました。

まず、楽員が舞台に登場する仕方か独特。
コンサートマスターを先頭にして入って来て、全員揃うまで着席しないのです。揃うと一同でお辞儀。

演奏が終わった後の答礼では指揮者一人がお辞儀するのではなく、全員が起立し続けていて、お辞儀は指揮者に合わせて全員が一緒に❗

また、指揮者が各パートの楽員を讃えるときは、指揮台から合図して立たせるのではなく、それぞれのパートの所まで出向いてそのパートの楽員達と肩を組み合っていました。

そして驚いたのは、「大曲」交響曲第4番では、チェロとコントラバス以外の弦楽器と木管楽器には椅子を置かず立ちっぱなし。金管楽器も演奏する時は立ち上がって吹いていました。「大曲」を立って演奏するのを見たの初めてです。

このように成果の多かったこのコンサートで、すっかりクルテンティスのファンになりました。