先日、割と滑り込みで劇場で観てきました。
『岬の兄妹』。
港町に住む兄妹。
足の悪い兄は解雇され、自閉症の妹と二人、
路頭に迷いそうになる。
しかし以前、妹が知らない男に体を許し
金銭を受け取っていたことから、
生活のために妹の売春を斡旋し始める。

障碍がある二人、なぜ生活保護を受けない?
観た人はそう思うかもしれない。
私もそれは思った。
けれどそれすら考えつかない、
教えてもらわなかったという環境下だという
世界のお話。

けれどこれを社会の“暗部”と見るのは
早計ではないか?
これは身近にあり得る話だと私は思うのだ。

皆が考えるより、世界は誰もが
頼れる親族や友達を持っているわけではなく
助かる術を知っているわけではない。
それを知らないのは馬鹿だ、
こんなことをするのは悪いことだと
外野から注意するのは簡単で、
だからといって泥沼に片足突っ込んで
手を貸してくれる人間などほとんどいない。
あなたははたしてそんな偽善ではないのか?
そう問われているような気分で、
終始胸が苦しかった。

そんな重々しい題材なのに、
懸命に生きる二人の姿はキラキラしていて、
こと兄の良夫が学生に絡まれるシーンでは、
「うわぁ…」となる行動をするのだけど、
それがカッコよく思えてしまったのだ。
自分はこれほど“生きる”ことと
向かい合って生きているか?
そう思ったけれど、今度は苦しくなるのではなく
憧れすら感じてしまったのだ。

それほどまでに、
主演二人のお芝居に引き込まれる。
これほどの日本映画がシネコンで観られる幸せ。

生きる人すべてに、
一度観て欲しい作品と思いました。