続いても1本。

結構前に観てたのに書けずじまいでおりましたの。
『少年は残酷な弓を射る』(11)。
『ウォールフラワー』(12)でエズラ・ミラーを知ってから気になっていた作品。

ライターとしてキャリアを積み奔放に暮らしていたエヴァは、
望まぬ妊娠で息子・ケヴィンを身ごもる。
エヴァは思うように言うことを聞かないケヴィンに愛情を持てず、
ケヴィンもまた、それを察知しているかのようにエヴァに懐かない。
やがて美しく利発に育ったケヴィンだが、
エヴァとの間の溝は埋まることなく、
それが引き金となり大きな事件が起きてしまう。

…というお話を、過去と現在を行き来しながら、
母親のエヴァ視点で辿ってゆく。
とても重々しく、スカッとすることもない作品だし、
子どもや家庭を持たない男性からしたら
「は??」って感じかもしれません。
というのも、この作品には
「親は無条件で子供を愛するもの」という定義は存在しないから。
エヴァ視点で語られる以上、
女性なら出産を経験せずとも察せるところあれど、
男性にはなかなか理解し難いかもしれません。
性差別的なお話ではなく、
性別の持つ特性としてそういう側面はあるかな、と。

でも、前述の「親は無条件で子供を愛するもの」というのは、
現実にも必ずしも存在する定義ではないのです。
私は今も母と友達のように仲が良いですし、
私のことを何よりも大事にしてくれる母親ですが、
それは幸運なこと。

このお話の主人公に当たるエヴァとケヴィンは、
2人ともとても勘が良いのです。
だからこそエヴァは直感的に息子を愛せない自分に気づくし、
ケヴィンもそれを感じ取ってしまう。
そして2人ともどうしていいか分からないまま、
悪い方へと進んでいってしまう。
お父さんもいるのですが、その存在はとても希薄。
ぱっと見、カリカリした母親に反して程よく子どもを甘やかす
良いお父さんに見えるのですが、本質を見ようとしないのです。
原題は『We need to talk about Kevin』。
その通りケヴィンについて話し合う必要があったのです、
この家庭は。

ケヴィンもずーっとエヴァに反抗して嫌がらせばかりをするのですが、
本当の心は最後の最後でチラッと見えるかと思います。

これもまた、終わってからだーっと泣いてしまった1本。
ともすれば、
私もケヴィンに成っていたかもしれないと思わせられるほどに、
苦しく、のしかかる想いがありましたね…。

そうそう、冒頭のトマティーナ(トマト祭)のシーンから始まり、
全編通して“赤”が印象的でした。
出産、血、怒り、色々なものの象徴なのであろうこの赤。
もしかしたら、
あなたにもずしっと重いものを残してくれるかもしれません。