わたしが40トレをしていた期間中に、六日間セミナーの壮行会があった。セミナーの出発前に皆が集まって、参加者を激励するのである。
この時の参加者は、青木という中京大学の一年生だった。もじもじとして声も小さく、気弱なおぼっちゃん、という感じだった。この男を伝道したのは、わたしを伝道した谷口氏だったので、統一教会的に言えば、わたしの「霊の弟」になるとのことだった。
統一教会では、この霊の親子関係が、非常に重要視される。伝道した人は、伝道対象者の「霊の親」となり、生涯、その人の魂に責任を持つのだ。
具体例をあげると、霊の子が二日間セミナーに参加している間は、40時間断食を行う。もちろん、その期間中は何度も神に祈りを捧げる。霊の子がサタンに奪われないように、統一原理のみ言葉を理解できますようにと、祈るのだ。統一教会風に言うと「精誠を捧げる」。
二日間セミナーを無事に通過し、六日間セミナーに行った場合、今度は三日間の断食を行う。これは強制ではないが、ほとんど半強制的である。やらないと、不信仰者だとみなされる。
なので、わたしを伝道した谷口氏は、わたしと青木の分で四回の断食を行ったはずである。だが、これは原研にいれば、ごく当たり前の日常風景である。
それからしばらく経ち、わたしが入寮する日が来た。応接室のような部屋に入ると、そこになぜか、青木がいた。わたしは内心「なんでこいつがいるんだ」と思った。
要するに青木は、六日間セミナー期間中に入寮を決めて、即、入寮してきたのである。だから、伝道されたのはわたしの方が早かったのだが、入寮日は同じになった、ということだった。
しばらく、部屋に二人でいたのだが、その時に青木は「キミは、いつからここに通ってるの?」と聞いてきた。わたしはその言い草に、カチンときた。
わたしは一浪の二年生で、青木は現役の一年生。ということは、わたしの方が二歳年上である。わたしは体育会系だったので、上下関係には敏感だった。なのに、いきなりのため口。何がキミだ、この野郎!
わたしは壮行会の印象で、青木のことを「甘ちゃん野郎」だと、見くびっていた。その相手から「キミ」扱いされて、わたしはかなり頭にきた。
普通だったら、入寮日に同期生がいるというのは、心強いはずである。だが、青木の印象が最悪だったので、わたしはうんざりした。「なんで、こんな野郎とこれから一緒に過ごさないといけないんだ!」
わたしの信仰生活は、初っ端からつまづいた。結局、わたしが原研を去るまで、青木との確執は続いた。わたしは今振り返っても、青木のことは大嫌いである。わたしの生涯で出会った人々の中で、トップクラスに嫌いだ。
なので、こうして記事を書いていても、当時の記憶がよみがえるので、大変不快である。
でも、これもまた因縁だと思うのだ。あのタイミングで、霊の兄弟で同じ日に入寮するなど、普通に考えても、なかなかありえないことだ。
まさに「アベルとカイン」。もちろん青木がアベルで、わたしがカインだ。聖書の中では、カインは嫉妬のあまり、アベルを殺した。だが、統一原理では「カインはアベルに従わなければならない」と、説いている。
だが、わたしの中にはカインの血が煮えたぎっていた。入寮初日の出来事は、わたしたちの闘いの、ほんの序章にすぎなかったのである。
(つづく)
