女性不信(8) | 未知なる心へ

未知なる心へ

統一教会入信から脱会までの日々と、脱会後の魂の彷徨。

販売会議は隣県の支店で行われた。菊本から 「吊るし上げ」 の話を聞いていた私は、緊張で顔を引きつらせながら席に着いた。

 

他店の同僚たちは、そんなにクセのある人には見えなかった。どちらかというと穏やかそうな人が多く、水商売風で下品なのは菊本ただ一人だった。

 

だが、会議の雰囲気は明るいとは言い難く、どこか陰鬱な空気を帯びていた。体育会系のような厳しさも怖さもないが、溌剌とした活気もなかった。テーブルを囲んで向かい合った社員の間には、「義務感で嫌々集まりました」 という負のオーラが漂っているようだった。

 

そんな空気の中で、新入りの私は押し黙って成り行きを見守っていた。だが、頭の片隅では 「ベテランのN君(私)が入社してくれてありがたい。これでH支店は安泰だ」 くらいの言葉がかけられるのではないかという、密かな期待もあった。

 

その月、私は入社初月ながら目標をクリアし、自分では合格点を取ったと思っていた。まったくの未経験者ではこうはいかない。仕事を覚えて一人で回れるようになるまで、最低二ヶ月はかかるのである。

 

それなのにおれは研修を数日で終えて、そこそこの数字を上げた。これは褒められてしかるべきだ・・・という思いがあったのである。私の心が不安と期待で揺れ動いていた時、社長がついに口を開いた。

 

「このたび、十年の経験あるN君が入社してくれたが、どうも上から目線のようである。業界でのキャリアは長いかもしれないが、この会社では新人なのだから、今までのやり方は一度横に置いて、わが社のやり方を一から学ぶように・・・」

 

私は耳を疑った。「はい・・・」 と返事はしたものの、心は穏やかではいられなかった。

 

「う、上から目線だと? 何をもってそんなことを言うのか。そもそも、社長はおれの仕事ぶりなどほとんど目にしていないじゃないか。おれはただ、今までの経験を活かそうと必死でやってきただけなのに、それを上から目線だと!?」

 

ただでさえ気持ちに余裕がないのに想定外の非難を浴びた私は、激しく動揺した。他の社員は皆押し黙っていたが、その表情からは何の反応も読み取ることはできなかった。