白い妖精(7) | 未知なる心へ

未知なる心へ

統一教会入信から脱会までの日々と、脱会後の魂の彷徨。

その後、なかなかYさんと共に歩む機会には恵まれなかったが、翌年夏の伝道機動隊で、わたしたちは共に召集された。

「伝道機動隊」 とは、普段はばらばらに歩んでいる各地の兄弟姉妹が、ある場所に集結して、一緒に伝道活動をするのである。名前は大層だが、やっていることは普段と何も変わらない。

例年は夏休みの終わり、9月の上旬頃までF(物売り)をやるのだが、この時は少し早めに切り上げて、その期間が伝道に当てられたのだ。

この期間、わたしとYさんがペアを組んで歩むことはなかったが、伝道期間も最後に差し掛かった頃に、ある事件が起こった。

学生は夏休みに入っている期間でもあり、なかなか伝道は進まなかったのだが、最後のほうでやっと二人の男子学生をビデオセンターに連れてくることができた。この二人は2DAYSセミナーへの参加も決まったのだが、このうちの一人は、Yさんが連れてきた学生だった。

統一教会では、伝道した人を「霊の親」、伝道された人を「霊の子」 と呼ぶ。そして、親が子を育てるように、霊の親は様々な面で霊の子をサポートしなければならない。霊の子の教育に立会い、霊の子のために祈り、霊の子がセミナーに参加している期間は断食までするのである。

そして、この二名の学生が、2DAYSセミナーに出発する日がやってきた。2DAYSでは、まだ統一教会とは明かさないのだが、セミナーでは祈りをしたり、聖歌(賛美歌)を歌ったりするので、セミナー会場へ出発する前にオリエンテーションと称して、それらの簡単な説明を行う。

だが学生の一人が、このオリエンテーションで、ここが統一教会だと気づいてしまった。それで仰天して、セミナーには参加しないと騒ぎだした。

そこで、オリエンテーションを実施した兄弟が、アベル(上司)の指示を仰ぐためにスタッフルームへ向かった。そしてその時、本来なら霊の親であるYさんが、学生を抑えておかなければならなかったのだが、あまりの険悪な雰囲気に耐え切れず、部屋を出てきてしまったらしい。

わたしはその時、スタッフルームで報告を聞いていたのだが、次の瞬間、「大変だ、二人がいなくなってる!」 と、別の兄弟が慌てて飛び込んできた。

 

誰かが「トイレにでも行ってるんじゃないの?」 と呑気に言うと、「ちがうよ! 荷物もないんだ!」 と、その兄弟はまくし立てた。

みんなやっと事態の深刻さに気づいて、慌てて部屋へ向かった。部屋の入り口の横では、Yさんが青い顔をして呆然と立ちすくんでいた。

そんなYさんを横目に部屋に入ると、そこはすでにもぬけの殻だった。荷物も、下駄箱の靴も消えていた。もう、二人が逃げ出したことに疑いの余地はなかった。

Yさんはアベルから、席を外したことを咎められていた。しかし、過ぎた事を言っても始まらない。わたし達はすぐに階段を駆け下り、みんなで手分けして周辺を捜索した。だが、逃げ出した人間がその辺をのうのうと歩いているはずもなく、結局は無駄足に終わった。

しかし、この程度では諦めないのが統一教会である。ここでわたしはアベルから、「Yさんと一緒に、学生の下宿へ向かって、連れ戻すように!」 と指示を受けた。もしそこに帰っていたら、説得して引きずり出して来いというのである。


もう、夜の8時を回っていたが、わたしはすぐに、Yさんを連れて車に向かった。そしてYさんを後部座席に乗せると、地図で調べた下宿を目指して、車を走らせた。


(つづく)