いざ出陣!~物売り編③ | 未知なる心へ

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統一教会入信から脱会までの日々と、脱会後の魂の彷徨。

この物売り、出発前には「出発式」なるものが実施される。

たぶん、世の営業マン達も同じようなことをやっていると思うのだが、ようするに戦場へ向かう前に気合を入れる「出陣式」みたいなものだ。

統一教会の物売り「F(エフ)」では、まずは「隊」と呼ばれる単位があって、たとえば全国を関東、中部等のいくつかのブロックに分けて、それぞれのブロック毎に1~2の「隊」が編成される。この隊の責任者が「隊長」と呼ばれ、全体の指揮をとる。

そして、その隊の下にいくつかの「チーム」が編成される。1チームはだいたい7人前後。ワゴン車の中で寝泊りするので8人以上になることはあまりない。このチームのリーダーが「キャプテン」と呼ばれ、実際の現地での責任者となる。

この隊もチームも、それぞれのリーダーの名前を付けて呼ばれる。たとえば体調が鈴木なら「鈴木隊」、キャプテンが佐藤なら「佐藤チーム」という感じだ。

新人研の物売りでは、「進行」という班長をまとめる責任者が隊長をつとめ、出発式を執り行った。

生まれて始めて他人の家にモノを売りに行く研修生たちは、当然ビビっている。隊長はその連中に気合を入れるべく熱弁をふるい、最後は皆で右手を振り上げながら勇ましい歌を大声で歌う。まるで軍隊である。

そして、新人研では「キャラバン生活」(車中で寝泊まりしながら各地を渡り歩くこと)はまだ行わず、研修所から車で移動する通いの物売りとなる。

車の中で、任地の地図と、昼食代の400円が渡される。地図の中には点がいくつか打ってあり、それぞれの点に番号が付いている。これは「回収地点」と呼ばれ、一日の物売りが終わった時に迎えにきてもらう地点を示している。

みんな初めてなので、最初は二人ひと組で周る。二人の方が当然心強い。

とはいっても、生まれて初めての体験である。緊張感は半端ではなかった。

車で30分ほど移動し、わたしはついに任地に降ろされた。

そこは市営住宅風の団地だった。古いのでインターホンなどはなく、鉄の扉の真ん中に呼び鈴のボタンが埋め込まれてあった。

わたしは大きく深呼吸すると、おもむろにそのボタンを押した。


(つづく)