今回は「懐かしの情景」でなく「至高の一品」としてこの「ジャイアントロボ」を語りたいと思います
ある意味、慣れ親しんだウルトラシリーズ以上に好きな特撮作品かも、と感じています

1.はじめに
 夏休み中はアニメ・特撮の番組を午前中によく放送していて、子どもには最高の時間でした

という話を前回書きましたが、なかでも「ジャイアントロボ」は放送頻度が高く、全26話で完結するので毎回最終回まで放送されました(「タッチ」なんて始まっても夏休み中に終わるわけがない)

お話をまとめると、

 

宇宙から来たギロチン帝王は地球征服のため、実行部隊としてBF団を編成し、破壊の尖兵ジャイアントロボを建造しました
しかしユーザー登録の声紋入力をする時点で、草間大作少年がロボに声をかけてしまったことで唯一ロボを操れる人になったのです
彼はユニコーン機関の隊員U7となり、ロボとともに地球防衛に大活躍します

大作くんは腕時計に話しかけてロボを操作しますが、同じく横山光輝原作の鉄人28号は二本の操縦桿で操作するので大変な進化です

ごっこの時は、子どもはボールペンで手首に
書いた腕時計に向かって喋ってました

当時「ロボ頑張れ!」のようなアバウトな命令でよく動くな、と笑っていましたが、現代視点だと音声入力データをAIが解釈して動作する、というハイテクノロジーを先取りしていた訳ですねスゲー

さて「ジャイアントロボ」の魅力について
語っていきますが、

2.キャラの魅力
主人公草間大作くんはとてもいい子です
「ショタコン」(幼い男の子萌え)の語源は鉄人28号の正太郎くんですが、明るく礼儀正しい大作くんも負けず劣らずにかわいい子です、しかも3次元。
主人公のキャラといえば熱血、強気、無鉄砲、勇敢
しかし大作くんは「かわいい」なんですね
相棒のU3も快活な好青年で、二人の仲良しぶりはとてもほほえましいものがあります

ウルトラシリーズは基本、起(怪事件発生)→承(展開)→転(怪獣出現)→結(主役登場)、という、主人公は受身のフォーマットですが、ジャイアントロボでは早い段階から大作くんたちが能動的に関与します
架空の外国への出動も多く、いろんなコスプレをしたり
物語が大作くんの冒険活劇であるところも
ウルトラシリーズに無い魅力です

敵方のBF団の印象も、冷酷非情で悪辣というより何となく人間臭く、ドラマを魅力的にしています

大作くん達は割とよくBF団に捕まるのですが
彼らは幹部が帰った途端にチェスやトランプに興じて監視を怠り、逃げるスキを与えてしまいますw

幹部ドクトルオーバーは宇宙人にも関わらず
べらんめえ調で「おめぇもヤキが回ったなあ」「いよいよご臨終」「お釈迦様でも気がつくまい」「全員お陀仏よ」と粋なセリフを放ちます 
BF団が捕えた大作くんを突き出すと
「なぁんだU7じゃないか」「ユニコーンの小僧」と敵味方を越えたフレンドリーな関係が窺えます

スパイダー、ブラックダイヤ、レッドコブラと人間的でどこかゆるい敵幹部は魅力的でした

3.作品の周辺について
当時はカラーフィルムの黎明期で、発色の悪さには苦労したそうです 科特隊の制服がオレンジ色なのは暗い色だと沈んで画面に映えないから、と聞きました
ユニコーン機関のクリーム+赤+水色という制服、BF団の茶色の制服に黒ベレー+ベルトの配色は円谷とは違う解決策なのでしょうがとても秀逸です
そして独特の明るくて黄色っぽい色調のフイルムは作品の印象そのものでもあります
私はリマスタリングされたDVDを買わずあえてLDをダビングしたものを視ています、夏休みに見た黄色くて埃っぽいあの色の映像こそ本物なのです

怪獣は、デザイン成田亨・造形高山良策のいかにも実在しそうな円谷怪獣とは異なりますが、独特のセンス、特に吊り怪獣の強烈な個性が好きですね
宮殿の裏に赤い煙とともに出現するガンモンスはずっと記憶に焼きつくほど強力だし、巨腕ガンガーの金属光沢も美しい(一方情けない身体フニャフニャの失敗作ダブリオンも愛す)
そしてロボの怪獣は何度も使い回しされます
数分で倒され二度と出てこない子が多いなか
なんと子ども思いなのでしょう(予算予算)

男声合唱の主題歌は鬼才山下毅雄の作曲、これがとても秀逸です
工場騒音が混じったような歌声とともに足元からパンしていく映像、力強いコーラスに乗せて起動するロボ、そしてサビから毎回今回の怪獣が出てくるのも素晴らしい
ウルトラシリーズのOPは毎回同じ切り絵だけなのでここはロボの圧勝といえましょう

劇伴も、ジャイアントロボはジャズバンドが演奏し、外国のスパイ映画のような味わいは
ピンチのシーンでも一味違う洒脱さがあります(作品にウェットさがなくどこか海外的なカラッとした雰囲気を感じるのは劇伴の効果もあるでしょう)
どっちが優れてるではなく、どちらも味があるのです


怪獣の鳴き声も違いますね
バリエーションはゴジラからのストックがある円谷には敵いませんが、サタンローズのメヘヘヘヘは心地よいトラウマ

4.最高の最終回
そしてなんと言っても最終回です

ギロチン帝王は3体の怪獣を同時に送り込み、ロボは戦い続けるものの燃料切れで停止してしまいます
そこにギロチン帝王が登場、自身の身体の全てが原爆同様の爆発物であることを見せつけます
帝王を攻撃すれば壊滅的な大爆発が起きるため、ユニコーンは手も足も出せずBF団に屈します

しかし突然ロボが再起動、帝王に向かっていきます
大作くんの必死の命令を一切受け付けず、ロボはギロチン帝王を羽交い絞めにしたまま地球を飛び立ち、宇宙空間で彗星に突撃、ギロチン帝王の大爆発とともに消滅したのです

ロボの再起動については説明(補助エネルギー装置)がありますが、なぜ大作くんの命令を無視して我が身と引換にギロチン帝王を葬ったのか、大作くんと戦ううちロボに意思が生まれていたのか、その解説をせずに幕を引くところが、ファンタジーとしてとても素晴らしい作品だと思います

(ちなみに数話前から、不思議なロボの挙動が散見されるという複線があります)

ロボの放送は夏休みとともに終わりますが
翌年夏にはまた帰ってくるのです
この反復は子どもに愛される重要な要素でしょう

おもちゃを毎年売りつけるだけで、翌年鼻もかけない
今時の特撮はねー

おまけ
・ジャイアントロボには漫画原作があり、週刊少年サンデーで連載されていた
 資料を見る限り、大作くんはドラマよりもう少し歳上で凛々しい感じ
・大作くん役の金子光伸は、同じ東映制作の
「悪魔くん」で好評を得てジャイアントロボにも主演、一方同時期の東映作品「仮面の忍者赤影」には青影役で子役の金子吉延が人気を博しており、二人は兄弟と思われていた(実は関係ない)
・ロボの特徴、怪獣を何度も使い回すエコぶりには予算節約の意味もあったようで、それでもウルトラセブン同様、終盤には怪獣が出なかったり極度に出番が減っていたりするが、基地に流入してロボを溶解してしまった粘菌状のヒドラゾーン、等身大プラモデルの人造人間などスリリングな作品が仇花のように生まれている
・ロボの発声を最初に「ま゛」と表現したのは江口寿史のギャグ漫画「すすめパイレーツ」
・最後に幼少期より心から消えないこの画像を(OPで、イカゲラスが噴く液で家屋が溶けるシーンです)