生揚げと生醤油の違い。 | map_on89のブログ

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えーと、生きていますよ。

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とりあえず「もろみを搾って(圧搾)得た液体」を【生揚げ-キアゲ】と呼びます。

で、それを加熱(火入れ)したものが【醤油】です。

通常は加熱後に【澱下げ-オリサゲ】という工程を経て出荷されます。


更に風味の向上と防カビを目的に醸造用アルコールを添加するのが一般的。

そう、「醤油の香ばしさ」の一部は「アルコール」のそれが演出しているのです。

こだわる人はアルコール添加を嫌う方が多いのと、手間暇かけてこだわった

醤油の場合はそのままの味をオススメしたいので、添加しない場合が多いけど、

その場合はできれば冷蔵庫で保管して欲しいと思います。


では【生醤油】とはなにか?

というか「なましょうゆ」と「きじょうゆ」は全く違います。


単純に【加熱しないもの】を指すのではなく、実は農水省の定義があります。

※詳しくは農水省の「しょうゆ品質表示基準」を見てね。

第4条の(6)が該当します。


まず、「本醸造方式」で作る必要があります。

8割の醤油がそれに当たるのですが、

「小麦と大豆と塩と水」以外加えちゃ駄目。という方式。

別にプラスチック桶でもコンクリート槽でもステンレスタンクでも木桶でもOK。
で、そこから得られたもろみを搾って得た醤油は「きじょうゆ」と呼んでもいいよと。

つまり「加熱云々では無く、混ぜ物をしていない醤油」を「きじょうゆ」と呼ぶのです。


単純にスーパーで売っている1リットル200円の醤油でも、本醸造方式で製造され

混ぜ物をしていなければ「きじょうゆ」なんですね。さすがにどのメーカーもさすがに

そういう名称はつけませんが・・・アレ?アノメーカーハ?


では、「なましょうゆ」とは?

「本醸造方式つくられ、加熱殺菌していない醤油」を指します。

でも、それでは乳酸菌やら酵母菌やら発酵は続いている状態です。

常温で保管すれば一気に発酵が進んで、

表面は酸膜酵母(さんまくこうぼ)で真っ白です。

そんな醤油では流通にのりません。


で、キッコーマンをはじめ大手メーカーがやっているのは

「加熱はしないけど、半透膜で菌を濾してしまう(精密濾過)しちゃう方法。」

それだけだと旨味成分も抜けてしまうので、

あとでそっと戻したりもします。それでも火入れしないので風味は結構違います。

菌類は除去されているので、常温保存が可能になります。


もうひとつは、賞味期限を短くして「クール便」や「冷蔵保管」で流通させる方法。

メーカーも販売業者も扱いが面倒なので、あまりやりたがりません。

上記を「なましょうゆ」と呼びます。


共に「生」と書くので紛らわしいですが、「き」と「なま」には大きな差があります。


では、「生揚げ」は?

まぁ、「加工しない、要冷蔵のなましょうゆ」と同じです。


いわゆる不純物(澱-おり)も含まれていますし、

酵母も乳酸菌もめっちゃ元気な状態です。

そのまま舐めれば、驚くほど複雑な味にびっくりする人が多いでしょうね。

醤油という名称が持つ「香ばしさ」は火入れで生まれるのですが、

なまの状態では味噌が持つ「まったりとした」芳醇な香りがトップノートになります。

なんというか、不純物というけど、実はこれが旨味の一部だったりします。

だから、生揚げを自分で加熱して作った醤油は、メーカーが出している醤油と同じに

なりません。そこにおもしろみを感じて清湯系醤油ラーメンが生まれたのでしょうね。


しかし、いいことばかりではありません。

桶毎に発酵の度合いが異なりますが、それを一切調整できないので、当たり外れが

生じます。言葉は悪いですが「驚くほど旨味が詰まっている」ものも「スカスカ」も

あり得るのです。(醤油メーカーは旨くブレンドして、火入れや塩水の調整などで

味を調えていますが、それができません)

ストレートな生揚げに自信がなければ、出せないわけです。

大きなメーカーでは、清酒に於ける「桶売り」をしていて、中小業者がそれを買って、

自分で火入れ調整して販売していますが、個人向けにはまず出荷しません。

説明だけでも大変ですから。


だいたい裏メニューで出しているのは、自社で一貫製造しており、木桶仕込の

醸造会社が殆どでしょう。逆に言えば自社で生揚げを持っているのは全国でも

少ないのが現状です。特に木桶生揚げを販売しているのは数社でしょう。

(木桶で仕込めるのは、全国で100蔵程度だそうです)



関東地区ですと、弓削多醤油(埼玉)と岡直三郎商店(東京)の2社ですね。

ともに濃口系です。


弓削多醤油 http://yugeta.com/nama/20061211.html

岡直三郎商店 http://nihonichi-shoyu.shop-pro.jp/?pid=14941489


ご参考まで。