連日、TPPなどの重要な問題をマスクするために、清原氏の覚せい剤常習について報道されています。


覚せい剤に一度手を出すと、なぜ心身が蝕まれていくのかについての最新の研究が報告されていました(Addiction Biology, 2016; DOI: 10.1111/adb.12356)。


これは覚せい剤の一種であるコカイン(通称コーク)の脳に及ぼす影響をMRIで調べたものです。


人間の脳には「快感中枢」とよばれる部位があります。


腹側線状体といいます。


何か創造的なことや愛の交歓などでは適度に「快感中枢」が刺激されます。


そのことでまたさらに創造的になったり、愛や絆を深め合ったりすることができるため、生存にとっては欠かせないといえるでしょう。


ところが・・・


その「快感中枢」も過剰に刺激されると、衝動的で危険な行動であっても抑制が効かなくなってしまいます。


つまり、過剰に刺激されると逆に創造性や愛を失う結果になってしまうということですね。


もちろんその行き過ぎた快感の過剰を抑える部位も存在しています。

それは「前頭前野」という脳の前頭葉の前部にあります。

ここはいわば脳の指揮者とよばれる統括センター。

さて、今回の研究ではコカイン服用者にギャンブルをしてもらったところ、勝っても負けても(お金をゲットしても失っても)「快感中枢」は過剰に刺激されっぱなしだったといいます。

「前頭前野」の抑制もまったく効かなかったということですね。

一方、コカインを服用していない健常者では、ギャンブルで負けた場合は、「前頭前野」の「快感中枢」の抑制がばっちり効いていたようです。

つまり、それ以上深みに嵌らないということですね。

また脳の形態を調べたところ、コカイン服用者では、脳の眼窩前頭皮質、尾状核といった快感中枢に関する部位が肥大していたようです。

そして快感中枢への神経線維(白質)のコネクションが強化されていました。

コカイン常習では快感を求めるばかりに抑制が効かない状態になるということですね。


覚せい剤は、最初は多幸感など引き起こしますが、そのうちに快感の虜となるべく中毒に進みます。
一度、中毒になると離脱するのがどれだけ困難かは、映画「フレンチコネクション」でジーン・ハックマンが迫真の演技で見せつけてくれます。


何事も「過ぎたるは、なお及ばざるがごとし」。


覚せい剤については及ばざるどころか致命傷になってしまいます。


医師には、覚せい剤と同じ作用をもつ抗うつ剤の乱用も慎んでもらいたいと思います。