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少年は不思議な光景を見た。
2枚の真っ赤な長板と、ひとつの黒い塊がいきなり空中から飛んできて、少年が弓で射ようとしていた大鹿にぶち当たったのである。
大鹿は叫び声もたてずに、その場に倒れた。
少年は大いに魂消て部落に駆け戻り、大人たちに事件を報せた。
男たちは直ちに弓や槍を持って、現場へ向かった。
事件は長老たちへも報告され、猟に出ていた他の男たちへも太鼓で伝えられた。
男たちは槍を構えながら、おそるおそるその不思議なものへと近づいていった。
それらの不思議なものは、冷たい光を放ちながら無造作に転がっていた。
2枚の赤い長板はいずれも一端がしゃくれており、その真ん中あたりにはキラキラ輝くものがついていて、一方の長板にはその部分に黒い塊がくっついていた。
そしてその黒い塊と同じものが、地面にひとつ転がっていた。
黒い塊にはポッカリと大きな口が開いてて、ところどころに冷たい光を放つものがついていた。なおもよく見ると、その不思議なものの表面には、たくさんの水滴が宝石のように輝いていた。
やがて長老たちがやってきた。異常を知らせる太鼓の音で事件を知った男たちも駆けつけた。女やこどもたちは後ろの方からこわごわのぞき込んでいる。
その不思議な物体は、今のところどうやら危険はなさそうである。
少年は長老たちに前へ呼び出され、物体に遭遇したした時の様子を説明させられた。
みんなは驚きながら、少年の目撃談に聞き入った。
長老はおそるおそる赤くて長い棒に触れてみた。それから決死の面持ちでそれを手に取った。棒には両サイドに鋭く長い刃物のようなものがついていた。
黒い塊がついた方の棒のその部分には、ベッタリと血がついており、大鹿の首はパックリと切れていた。
地面に転がっていた黒い塊を拾い上げて首を傾げていた別の長老は、もう一方の棒を取り上げ、そのピカピカ光っている部分に塊をあてがってみた。

「大変だ! 太陽が欠けていく!」
突然誰かが叫んだ。
長老が驚いて天を仰いだ途端、ガチャリと音がして黒い塊が長い棒にくっついてしまい、長老は思わずそれを投げ出した。

太陽は次第に欠けて、あたりは夜のように暗くなって
いった。
みんなは恐れおののいて地にひれ伏していた。
いくばくかの時間が流れ、再びあたりは明るくなり始め、太陽はもとの丸い形に戻った。
「これは畏れ多い“神の剣”じゃ……」」
ややあって、チーフ格の長老が呆然としていたみんなに向かって叫んだ。
「この剣によって大鹿が切られ、今また太陽さえ切られた。神の剣は餓えたる我らに大鹿をお恵み下されたが、一方で恐ろしい天罰をも与えるものである」
長老の命により、“神の剣”二振りは大切に部落へ運び込まれ、神の家にまつられた。(つづく)