天狗(9) ある晴れた朝、よはんせんは横浜から英国汽船“さうざんくろす”号で帰国の途についた。 岸壁には、通弁として毎日活躍している佐助の姿があった。 よはんせんは大粒の涙をはらはらこぼしながら、佐助に別れを告げた。 その胸には24年余の思い出が不思議に懐かしく去来した。 “ぐっばい・まい・さん!” “おやじさん、いつまでもお達者で!” 佐助は船影が見えなくなるまで岸壁に立ち尽くしていたーー (終)