?……
彼はあたりを見渡した。
全く見憶えもない、奇妙なところに彼は転がっていた。
身体じゅうがミシミシ痛い。
〈いったい全体どうしたってんだ? サッパリ訳がわからん!〉
その時、彼はメタリックな生地のジャンプスーツを着ているのに気がついた。
〈待てよ…… これは国際フリースタイルスキー選手権に出場するために新調したヤツだぞ!〉
彼は記憶の糸をたぐり始めた。
〈そうだ! 選手権でオレはウルトラ・アクロバットのメビウス・ジャンプをやったんだ……〉
メビウス・ジャンプとは、彼が考え出したとてつもないアクロバットであった。
水平から垂直へと変化していく長いアプローチ・コースに猛烈なスピードで飛び込んで行き、横ざまに空中に飛び出して、側方に630度回転(つまり1回転と4分の3)しながら、前方に2回宙返りして着地するというものである。
わかりやすくいうならば、クルクル旋回しながら進行していくライフル銃の弾丸が、2回前方に宙返りするようなものである。
これは成功すれば優勝間違いなし、というシロモノであった。
しかし、ちょっとしたミスが死につながる。
細心の注意を払ってコースを作り、アクションのイメージングを繰り返した上で、呼吸を整えてGO!
空中に飛び出した感覚も申し分なく、“いける!”と思ったのだが……
だが、前方に1回転したところで身体が訳の分からないねじれ方をして……
……それから先のことはまったくわからない……
「どうかしましたか?」
声をかけられて見上げると、頭が異常に大きくて、胴や手足が何だかひょろっとした男がふたり立っていた。
「ええ、そのう……」
「見かけない姿だが、どこから来たのですか?」
「それがよく……」ここは一体どこなんですか?」
「ブラビアだが……」
「ブラビア? きいたことないなあ……」
「あなたのコード・ナンバーは何番?」
「コード・ナンバー? それは何?」
「むっ、インベーダーだな!」
男のひとりが胸についているボタンを押した。
そこには20個ほどボタンがついていて、それらがチカチカ光って美しかったのだが……
〈インベーダーなどと……〉
何となく危険を感じて彼は逃げ出そうとしたが、すぐにホバークラフトのようなものに取り囲まれ、窮屈なカプセルに閉じ込められて、警察へ連れていかれた。
彼はそこでいろいろ取り調べを受けた。
そうしているうちに、今はAD2320年であるということ、ブラビア国は太平洋の真ん中に隆起した大陸上の国で、国民はすべてコードナンバーが振られ、コンピューターにオンラインされていることなどわかってきた。
彼を拘束した男たちの胸のボタンが、端末だったのである。
尋問に対して彼が供述した内容は、すべてコンピューターにかけられ分析された。
その結果はすべて、2014年時点のデータによってすべて裏づけられ、彼は一応危険人物ではないことが認められた。
しかし、206年という時間差を超えてやってきたなどということはあり得べきことではないとされ、さらに種々の科学捜査が行われることになった。(つづく)