少年が震えながらうずくまっていた。
男は自分がまとっていた毛皮の上着をかけてやり、腰につけた物入れから手製の焼き菓子を取り出して、少年に差し出した。
 
佐助は雪明りの下で天狗様の顔を見た。
動物の毛皮を着こみ、長い金色の髪、ひげもじゃの赤い顔、青い眼、大きな鼻……
だけどずいぶんやさしそうな顔だ。
その顔がにっこり笑った。金色の歯が見える……牙じゃない。それも1本きりだ。
佐助も思わず笑った。すごく親しみを覚えた。
 
少年が元気になったので、男は麓の方を指さして、里に帰るよう身振りで示した。
だが少年はかぶりを振り、山側を指さしてにっと笑った。
 
どういうつもりなんだろう?
帰ってくれないと、村人たちは少年がさらわれたと思って捜しにくるに違いない。
しかも、雪の上には足跡が残っている……
危険だ。男がこれまで盗みとってきた牛やにわとりの場合とは違う。
 
男はにっこり笑って見せながら、再び少年に里へ帰るよう示した。
 
ゴーッ。
山鳴りが聞こえてきた。
すぐに荒れるな。
これじゃ少年をひとりで帰す訳にはいかない……
だからといって送って行けば、自分が村人に捕らわれてしまうだろう。
 
仕方ない。
とにかく今は小屋へ少年を連れ帰ろう。
足跡は吹雪が消してくれるだろう。
 
男は少年を肩車にして小屋へ連れ帰った。(つづく)