気がつくと、佐助は見たこともないような家の中にいた。
壁際には土を固めて作ったらしい大きなかまどのようなものがあり、薪が赤々と燃えさかっていて、とても暖かい。
これが天狗様の家か……
佐助はやたら感心して、家の中を見まわした。
天狗様はほかほか湯気の立っている白い液体を勧めてくれた。
甘酒かな?
いや違う……。
何というにおい、まずさ!
天狗様はそれをおいしそうに飲んでいたが、佐助には飲めなかった。
しかし、その後の晩ごはんはなかなかおいしいものだった。
天狗様はにこにこ笑いながら何か話しかけてくるが、さっぱりわからなかった。
やがて、かまどの火の前に寝床を作ってくれた。
これも毛皮だ。
こんなに暖かい寝床で寝るなんて、生まれて初めてだ!
天狗様は、といえば、高い台の上で横になっている。
佐助はひとりでに楽しくなってきた。
一方、里ではその日の朝、庄屋はにわとりが3羽いなくなり、例の木彫りがにわとり小屋のそばに置かれているのを発見した。
そして、とっくに起きて働いているはずの佐助の姿が見えないことにも気がついた。
天狗様がこどもをさらっていった!
村中の男たちが集められて、天狗様と佐助のものらしい足跡を追っかけた。
しかし、昼頃になって凄まじい吹雪となった。
村人たちは足跡も見失ってしまい、命からがらの状態で村に帰り着いた。
それっきり、佐助は二度と姿を見せず、村人たちは寄るとさわるとその話をして恐ろしがった。(つづく)