こうして幾年かが過ぎて、佐助はすっかりたくましい若者に成長し、よはんせんは老いた。
 
よはんせんの望国の情は日毎に募っていき、佐助は何とかその願いを叶えてやりたいと思った。
 
ある日、佐助はふたりで山を下りることを提案した。
その上でお役人に申し出て事情を話し、帰国の許可をもらおうというのである。
 
だが、よはんせんは村人やお役人に出会うことを恐れた。
 
確かに危険なことかもしれない。
しかしながら、山にいてはいつまで経っても帰国はできないだろう。
 
とにかくやれるだけのことはやってみよう。今は私が何かの役に立つだろう――
佐助はよはんせんを励ました。
 
そしてついにふたりは、今はその数もすっかり増えた牛とにわとりを連れて、長年住み慣れた丸太小屋を後にした。
 
よはんせんが漂流してから実に24年目、佐助が来てから10年目のことであった。(つづく)