価値あるものを安く売ることの意味 | 無農薬栽培 みんな集まれ!ノーマ農園

無農薬栽培 みんな集まれ!ノーマ農園

2011年春、愛知県愛知郡東郷町諸輪畑尻山90番地に、すべての人がノーマルに生きるための農園が誕生しました。その名も『ノーマ農園』。

世の中には、価値あるものを安く提供することを善とする価値観があります。
その代表格がスーパーなどの小売業です。
消費者に向けて、良いものをよりやすくという言葉が普通に使われます。
私も前職の時に、名だたる日本のスーパーや百貨店、コンビニのバイヤーさんと商談する機会がありましたが、彼らからは、良いものをより買いやすい価格で提供したいという要請が強くありました。

一方で、自身や自身の提供するものやサービスに自信が無く、価値あるものを安く販売しようとする人もいます。

この両者の存在により、日本では安いことは良いことだという価値観が醸成され、世界の先進国の中で物価の安い国になりました。
私が仕事で海外に行っていた30年から40年前には、日本は物価の高い国でしたし円の価値も今より高かったと記憶しています。

個人的には、政府や日銀が言うところの物価2%の安定目標に賛成していませんし、そもそも物価を安定的に上げなければ経済が成り立たないこと自体がおかしいと思いますが、現在の経済システムの中ではそうなってしまうのでしょう。
そのことは横に置いておいて、安いことは本当に良いことなのでしょうか?

私はものの価格を観るときに、安いものには意味があり高いものには意味がないものもあると思っています。

安いものは、粗悪品であるかその安さの陰に買いたたかれて苦しんでいる人がいると思います。
高いものには、商品としての価値が高かったり希少価値があったりする場合もあるのですが、高く見せかけてそれほどでもない商品も世の中には散見されます。

本題に入りますが、農業においても価値あるもの、例えば無農薬や有機栽培で環境や人に優しい美味しい野菜を栽培しているにもかかわらず、安く販売する人がいるのです。
ノーマ農園も、農業を始めた頃は、スーパーの野菜の価格に20%程度上乗せした価格で野菜を販売していました。
好きな農業をやって自然の恵みで生長した野菜なので、それで良いと思っていたのですが、販売する中上さんや永野さんから、価値ある野菜を適正な価格で販売するようにたしなめられました。

今では、ノーマ農園の野菜はスーパーで販売される慣行野菜の1.5から2倍の価格で販売していますが、無農薬有機栽培を始めた農家さんでたたき売りのような価格で野菜を販売する人もおられるので、そのような方には野菜に申し訳ないと思いませんかと問いかけます。

無農薬有機栽培の野菜は、慣行栽培に比べ収穫量は半分以下、草取りなどの労力がかかり、病気や害虫によるリスクもあるのに、スーパーと同じような価格で販売すれば、自ずとその先は明らかです。
経営が立ち行かなくなり、夢を諦める結果とつながって行きます。
本物の野菜(環境や人に優しい持続可能な農法で作られた野菜)を提供する農家さんが増えないと言うことは、本物の野菜( 環境や人に優しい持続可能な農法で作られた野菜 )を食べることができる人も増えないと言うことです。

野菜は日持ちがしないので収穫したら売りたいと思うのはどの農家も一緒ですが、安売りだけはしない方が良いと私は思っています。
では、どうやって収穫した野菜をお金に換えて経済循環を作って行くか、そこには、知恵と工夫と勇気と覚悟が必要です。
それを話すと2時間くらいはかかってしまうのでここではお伝えしませんが、価値あるものを作っている農家さんは自信を持って適正価格(価値=価格)で販売して欲しいと思いますし、消費者もそういった価値ある農家を買い支える度量と見識を持って欲しいと期待します。
ノーマ農園は、そのような見識と度量のある消費者に支えられてここまで続けてこれたのですから。