農業と他産業との決定的な違い | 無農薬栽培 みんな集まれ!ノーマ農園

無農薬栽培 みんな集まれ!ノーマ農園

2011年春、愛知県愛知郡東郷町諸輪畑尻山90番地に、すべての人がノーマルに生きるための農園が誕生しました。その名も『ノーマ農園』。

「農業を株式会社化する という無理 これからの農業論」という本を貸してもらって読んでみました。
儲けにつながりにくい農業を、会社という組織で運営することは無理があるのではないかと思っていましたので、そうだろうなという軽い気持ちで読み始めたのですが、なかなか本質を突いた内容でした。

農業を会社化することに無理がある理由がいくつか上げられていましたが、私の記憶に残っているのは2つです。
一つは、株式会社は有限責任ですが、農業は無限責任であるというものです。
株式会社は、資本金を用意して会社の登記をすれば設立できます。
そして、倒産すれば、出資金を含めて資本金は負債に当てられてなくなってしまいますが、会社が持っている資産以外に会社や役員が責任を負うことは無い有限責任なのです。

ところが、農業は国民のお腹を預かる営みなので、作物が無いので食べるのを我慢してくださいという訳にはいかない、不作だろうが凶作だろうが国民に食を提供する義務がある無限責任なのです。

二つ目は、株式会社は利益追求を第一義としますが、農業は利益では推し量れない活動なのです。
農家がいない都心では、道路や街路樹の草刈りや水の管理は行政が行いますが、田舎では道路の草刈りは地域の皆の協力で行います。田に使う水のため池の管理や清掃草刈りは、その水を使う人たちが担っています。
水田は、大雨の際のダムの役目を果たし防災の役目も担っていますが、一銭も頂いていません。
利益追求の農業法人だけになったら、村のインフラは正常に保たれるのでしょうか。

有機や慣行という栽培方法の違いを超えて、農業の本質を考える機会をもらいました。
農業も合理化できるところはしなくてはいけないし、地球環境の保全やCO²削減の努力もしなくてはいけませんが、農業の持つ本来の役割である国民のお腹を満たすという最も基本的で大切な目的が全うできるように、国政や地方行政に活躍してもらいたいと期待しています。
20年ぶりに改正された農業基本法は、国民の食を守ることを担保しているでしょうか。

今の日本は、飽食で多くの食べ物を無駄にしているのが現実ですが、いつまでもそんなことが許されるはずはないと思っています。
食のほんの一端を担う零細農家としては、食糧危機が起こる前にソフトランディングして欲しいと願っていますが、痛い目に遭わないと分からないのが人間であるのも事実なので、お尻に火がついてから考えて行動してゆくのでしょう。