自動車のドアロックは、今やスマートキーのおかげで随分楽になった。
しかし、そんな便利なキーシステムも故障すると一気に不便になる。
リモコンで全ドアのアンロックができなくなってしまったヴォクシーが入庫した。
全ドアのロックはリモコンでできる。
そして運転席ドアのメインスイッチでも同じようにロックはできるがアンロックはできない。
だから施錠した車に乗り込む時にはスマートキーに刺さってる差し込みキーを使って物理的に解錠しないといけない。
しかし、それでも開くのは運転席ドアのみ。
他のドアは内側のロックノブを手で動かして解錠しなければ開けられない。
最初はメインスイッチが壊れたかと思ったが、正常に動いてる他のZRR70のスイッチと付替えても同じ。
となると、もうECUの故障くらいしか思いつかない。
診断機を繋いでみると、確かにロックとアンロックの認識がズレている。
ドアロックなど室内の電装を制御しているECUの正式な部品名は『パッセンジャサイドジャンクションブロック』で定価は51500円(税別)と高額だ。
試しに替えてみるしかないので、お客さまの了承を得て取替えることになった。
弊社ではこんな症状は初めてだったが、ネットでは同じような故障例が他の車種で見られたから、このECUが壊れることはたまにあるようだ。
付いてる場所は助手席グローブボックスの奥の左側。
写真は取替後のものだけど、この真ん中の白い箱がそれ。
こんな風にグローブボックスを外せば見えるし、比較的楽に取替できると思い作業開始。
グローブボックスを外して手前のカプラーを抜く。
そしてECUのブラケットを止めてるボルトとナットを外し、ブラケットごとECUを引き出す。
(ん?)
引き出す。
(ん!?)
引き出す。
(む~)
( … )
引き出せない。
何だこれ?
どうなってるんだ?
よく見ると、奥の方でぶっといハーネスの束がブラケットにタイラップで止めてある。
それを切らなければ手前には引き出せない。
狭くて手が入らず、ニッパーでは届かないので裁ちバサミを突っ込んで無理矢理切った。
ここだけは取付時に結束できないけど仕方がない。
あれは無くても大丈夫だろう。
他にも配線が何か所か、同様にブラケットに固定されていた。
それらのタイラップも切るとだいぶ自由に動くようになって、こねくり回して何とか引き出せた。
厄介だったのは最初の画像にも写ってる水色のリレーの配線。
このリレーはECUブラケットに取り付けられており、この配線に余裕がなくて自由度をかなり奪われた。
配線はカプラーで接続されてないし、リレーブラケットはECUブラケットにはめ込まれていてこの状態では抜けそうにないので、リレーがブラケットに付いたままECUを外しにかかる。
裏側のカプラー2つ(両方ともロックレバー付き)を抜いて、ECUとブラケットを止めてるボルトを外し、さあいよいよECUを取り出せるかと思ったら、今度はブラケットからECUが外れない。
ちなみにECUの裏側はこうなっており、(これも取外し後に撮った)
外すのはまず左側(取付状態でいうと下側)のカプラーから。
それから黄色のロックカバーを左にスライドさせ、右側のカプラーを抜く。
順番が逆だと無理がかかる。
もちろん、差し込む時は逆の順で。
さて、ECUとブラケットの組み合わせを取り出さないと、この2つを分離させられそうにない。
そのためには…。
ここで腹を決め、ECUブラケットに付いているリレーのブラケットをマイナスドライバーでこじて強引に外した。
強引、とは言っても抜ける向きにしか力を加えていないから、何とか壊れずに上手いこと外れてくれた。
これでブラケットとECUのセットを外すことができた。
どうやらECUはブラケットにパチンとはめ込まれているようだ。
そのくせ遊びは大きくガタガタしている。
それならば、どこかにあるはずの引っ掛かっている爪を外せば良さそうなものだが、その爪が見当たらない。
新品のECUを見ながら考えた。
ボルト穴の横にピン状の突起が出ており、これを折れば外せるのではないか。
隙間はあったので金ノコの刃を入れてゴリゴリ。
半分ほど切り目を入れたところで力を加えたら、ピンが折れて無事にECUが外れてくれた。
ここにピンが出ていた。
後は外した逆の順序で組付け。
今思えば、水色リレーの配線に余裕がないので、ECU裏側のカプラーを先に差し込んでから、ECUブラケットに水色リレーを付け、それからECUをブラケットにはめた方が楽だったかな。
整備振興会のFAINES(整備書などを見ることができる会員用サイト)にも脱着の要領が載ってなかったから、慎重に色々と考えながらの作業で、まあ苦労した。
正規にはダッシュボードを外して交換するのかな?
そうしないと奥のタイラップはかけられないからね。
組付け後はドアロックが正常に働くようになって万々歳!
バッテリーのマイナス端子を外して作業していたので、バッテリー接続後にエンジンをかけると、今度はアイドルアップが働かない。
再学習が必要か。
しばらくそのままにしておいたら、アイドリングが500回転くらいと低くて今にも止まりそうなくらいになった。
これは少し走り回る必要があるかも。
試運転に出ると、最初のうちはアクセルの反応が悪くて乗りにくかった。
それが段々と良くなっていき、戻る頃には正常になった。
翌日の朝にエンジンをかけるとアイドルアップも働いて一安心。
無事完成。
良かった良かった。
P.S.
ロックレバー付カプラーの補足説明です。
このカプラーは裏側だけでなく手前側にも1つあって、この黒い枠のようなものがロックレバー。
見にくいけれど、指差している所の端の奥にベロがあって、それを押しながら指している所を手前に引くとカプラーが抜けてくる。
端の隙間に指先を突っ込むと否応なしにベロに触れるから、やれば分かるさ迷わず行けよ(笑)
カプラーの差し込みはレバーが起きた状態から行い、押し込まれていくに従いレバーは倒れていく。
奥までしっかり押し込んだら、最後にレバーの指差している所を押して、ベロがカチッと鳴ったらOK。