朝のラジオから、モーツァルト作曲、バイオリン協奏曲第5番『トルコ風』が流れています。
この曲を聴くと、真っ先に思い出すのは、一学年上の先輩が演奏した時のこと。
普段は気さくでサバサバした先輩が、本番前の舞台袖に、ドレス姿で現れた時、なんて綺麗なんだろう と思った事。
客席で演奏を聞かず、舞台上手側からずっと先輩の様子を見ていたのですが、バイオリンの弓を持つ手が震えていた事。
オーケストラの前奏が終わり、先輩がゆっくり弦の上に弓を置き、静かにラの音を弾き始めたその一瞬の音色は、黄金色だった事。
恵まれた事に、私は今まで、クレーメルをはじめ、国内外の一流バイオリニストで『トルコ風』の実演を聞きましたが、あの先輩の紡ぎだした黄金色の音色ほど、心ふるえた事はありません。
3楽章の中間部、トルコ風のフレーズが終わり、主題に戻った時、
『ああ、演奏は続いていたんだ』
と気がつきました。
私はあの、黄金色の音色を聴いた瞬間から20分ほど、時が止まっていたようです。
にじいろ音楽室
ばばとしひで
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