昨日、浜松ピアノコンクールで1位を獲得した、トルコ出身のチャクムルさんの演奏を聴きました。
アンコールで演奏された、ファジル・サイ作曲の『ブラックアース』を聴いて、なぜ彼がベートーベン作曲のピアノ協奏曲第3番、ハ短調という曲を選んだのか、明るく華やかなスタインウェイのピアノではなく、カワイのピアノ、しかも響きの深い《シゲル・カワイ》を選んだのか、アンコールに、ベートーベンやショパンの小品を選ばなかったのかが、なんとなくわかる気がしました。
コンサートの後半は、チャイコフスキー作曲の交響曲第5番。指揮者の高関健さんの演奏を聴くと、音楽って、生命を持った生き物だなあ と感じることがたびたびありましたが、今回も、目の前のオーケストラの指揮をされていると言うよりは、オーケストラの上に存在する、うねりを伴った生き物と戯れていらっしゃるように感じました。
チャイコフスキーの交響曲第5番は、学生時代に1年かけて取り組んだ大曲。自分の与えられたパートを演奏する事に必死で、周りの音を聴く余裕なんて全くありませんでしたが、昨日しみじみと聴きながら、チャイコフスキーという作曲家は、クラリネットパートに自分の本音を語らせている気がして、ヴァイオリンやトランペットなどで奏される華やかなメロディより、ビオラやクラリネットなどの内声に自分の耳を傾けつつ、上体が下半身の上に綺麗に乗り、歌うのに理想的な姿勢を2時間崩さなかった、第1ヴァイオリンの2プルト目に座っていらっしゃった女性ヴァイオリニストから目が離せませんでした。
4月20日
札幌キタラホール
札響名曲コンサート
ファジル・サイ作曲
『ブラックアース』
にじいろ音楽室 札幌
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