ラジオから流れてきた
ミヨー作曲
『プロヴァンス組曲』に
注意深く耳を澄ますと
オーケストラの響きの向こうに
深胴の太鼓の音が
聞こえてきた
プロヴァンス地方の
伝統的な太鼓だろう
オーケストラの響きに
たった1つの
《異国》が入るだけで
サウンドは一気に
南仏の香りに包まれた
昨日のブログで紹介した
チャンス作曲の
『呪文と踊り』では
マラカスに始まり
クラベスやティンバレス
ギロなどの
ラテンパーカッションが
大活躍し
曲の舞台は南米なのだろうと
容易に想像がつく
打楽器1つで
サウンドが劇的に変化することは
往々にしてあるのだが
先日PMFの子供達が
前半のプログラムで演奏した
ドビュッシー作曲
『映像』第3集《イベリア》は
その第一声から
カスタネットの響きを伴って
スペインのセビリヤ地方を
巡る旅に連れ出してくれる
少し話は逸れるが
この『映像』は
少し風変わりな構成で
第1集と第2集は
ピアノのために
第3集が
管弦楽のために書かれている
特に第2集は
『葉ずえを渡る鐘の音』
『そして月は廃寺に沈む』
『金色の魚』
と不思議な曲名が並び
印象派の巨匠
ドビュッシーならではの
独創的な手法で作られた
名曲揃いであり
別の機会に
ぜひこのブログでも
取り上げたい題材である
話を元に戻そう
このカスタネットという楽器は
実に取り扱いが難しい
繊細な楽器なのである
左右の音色を揃え
2つ打ちと言われる
独特なロール奏法を会得し
かつ
オーケストラや
吹奏楽全体の響きから浮かずに
調和を保ちながら
カスタネットの風味を引き出すのは
実に神経を使うのである
ふと
学生時代に
イベール作曲の
『寄港地』を勉強した際
担当教授が
特別なカスタネットを
ご自宅から
持ってきてくださった事を
思い出した
つやつやと輝き
とても手に馴染む
品の良いカスタネットは
どこまでも澄み渡るような
乾いた響きがした
さて
このカスタネットは
何でできているのでしょう
という先生からの問いに
我々生徒は
紅葉や樫
檜かなあと 口々に答えたが
先生の答えは
意表をつくものであった
絹糸
だったのである
どこまでも細い絹糸を
途方もない時間をかけて
巻きつけ作られた
先生自慢の逸品であった
紡いだ糸を手繰り
商品価値のある絹糸に仕上げ
それがまさか
カスタネットに生まれ変わるとは
お蚕様も
さぞびっくりされている事であろう
そんなカスタネットに
思いを馳せながら
全く別の思いが
むくむくと湧き上がってきた
我々人間にも
《声》という
素晴らしい楽器が備わっているが
たった1音の発声に
どれほどの
注意と敬意を払っているのだろう
相手を大切に思い
相手に届くよう
丁寧に扱わなければ
実に
実に呆気なく
調和なんて崩れてしまうものだと
土曜日の朝から
思考は深く
巡り続けるのである
ドビュッシー作曲
管弦楽のための映像
第3集より
『イベリア』
★にじいろ音楽室 札幌★
札幌でボイストレーニングとボーカルレッスンを行っています。詳細につきましては、こちら教室HPまで検索お願いいたします。