ベートーベン作曲の
ピアノソナタ
『ワルトシュタイン』が
ラジオから流れてきた
ステレオから離れた場所で
かつ
食器を洗いながら
聞いていたのだが
冒頭 左手で奏される
ドとソの重音の連打が
太鼓の音にしか聞こえず
その不思議な音色に魅了され
食器を洗う手を止め
出勤前の慌ただしい時間に
しばし聞き入ってしまった
いや
正確に言えば
色々なことを
《妄想しながら》
聞いていたのだ
妄想と言っても
エロいことではない
例えば
この連打は太鼓のようだ とか
このフレーズは
モーツァルトの影響を
受けているのだろうか とか
この速いパッセージは
ピアノの音の粒が揃って
さすがアシュケナージだな
など
耳が音を感知した途端
心が反応して
思考が止まらないのである
いつからこんな
ややこしい聞き方を
する様になったのだろう
出てきた音や音楽を
《ありのままに聞く》ことの
なんと難しいことだろう
ああ
面倒くさい
面倒くさい
こんな
自分勝手な講釈をつけられて
ベートーベンも
さぞ迷惑なことだろう
まだ楽章の途中であったが
泡の残った指先で
ラジオのスイッチを
パチンと消した
★にじいろ音楽室 札幌★
札幌でボイストレーニングとボーカルレッスンを行っています。詳細につきましては、こちら教室HPまで検索お願いいたします。