僕たちが恋をする理由 -3ページ目

僕たちが恋をする理由

自分探し、してます。

「大家さんちのネコ」


以前にこの場で取り上げたこともあるが、お向かいに住む大家さんの家には飼い猫がいる。


ネコには詳しくないから種類は分からない。オスなのかメスなのかも分からない。


キャラメル色の入った良くいるフツウの感じのネコだ。



ネコは自由で気まぐれな性格と良く言われるが、あれほど自由なヤツを私は今まで見たことがない。


ヤツはマンションの駐車場で一番に背の高い車のボンネットから、いつも下の世界を見下ろしている。


殿様気取りなのか、自分のテリトリーを守っているのか、ヤツのしたいことは定かではないが


ねっとりとした視線を道行く人間たちに向けるあの風貌はまるで主(ヌシ)といった感じだ。



主(ヌシ)はいつも駐車場にいる。


定位置はいつも停まっているトラックのボンネット。


なぜあの場所にいるのかは分からないが、どうやら一番お気に入りの場所のようだ。


私が学校やバイトから帰ってくるときは主は必ずそこにおり


部屋に入るまでじっとりと舐めるように視線だけをずらして送ってくるのだ。


たまに車の下に入り込んで仰向けに寝転がっている時でもその行為は決して怠らない。


車のバンパーの上に乗ってセクシーポーズを見せつけてきたこともある。



この主、1年くらい前まではもう少し可愛げのあるヤツだったのだ。


帰ってくると必ずと言っていいほど近くに寄ってきて、部屋の前まで着いてくる。


すると玄関ドアを「早く開けろ」と言わんばかりに立ってガリガリと引っ掻きだすのだ。


うっかりそのまま開けようもんなら家の中にひゅるりと侵入されてしまう。


慣れてくると帰ってきた人を見てその人の部屋の前に先回りするという頭のいいヤツだった。



その日、いつものように主が玄関に先回りしたのを見て「またか...」とため息をついた。


そして玄関まで行くと、慣れた手付きで主を交わして部屋の中へと入った。


家の中に入ったらまず最初に窓を開けたい私は、いつものように部屋のカーテンを開けた。


その瞬間、あの主がバルコニーの真中にどすっと構えて座っているではないか。


しかも待っていたという感じでこちらを見て行儀よく構えているのだ。


私は思わず「うわっ」と声を上げた。



だが、その流れは可愛いというよりもむしろゾッとした。


玄関と反対側にあるバルコニーまでの距離や私の部屋のバルコニーを迷わず選んだたこと。


こちらをじっと見つめる主を見下ろして硬直しながら、いろんな不思議な点が脳裏をよぎった。



その後とりあえず気を取り直して窓を開けてみたものの、主が網戸をガリガリとし始めるので


しかたなく窓を閉めてエアコンのスイッチを入れた。主はずっとこちらを見ている。


なんとなく可哀そうなのでカーテンは開けておいてやるも、主はいつまでたってもそこから動こうとしない。


あまりに動く気配がなく不気味であったので、私はとうとうカーテンを閉めた。


パソコンを開いてしばらく画面に目をやっていると、しばらくして主は鳴き出した。


「にゃーお、にゃーお」とまるで私を呼んでいるかのよう。


このまま放っておけばいつまでも鳴き続けそうだったので、私はカーテンを再び開けてやった。



主は私の顔を見るなり窓をカリカリカリカリ爪で引っ掻きだした。


一体なんの目的があるというのだろうか。主とはいえネコのくせにしつこすぎないか。


私に懐いているのか、はたまた恨みでもあるのか。



主はその後しばらく引っ掻くことをやめなかったが、


私があまりにも無視を貫くことに徹したためとうとう諦めて帰っていった。



それから主はバルコニーにこそ現れなくなったが、玄関までついてくることも少なくなった。


今ではトラックの上からただ見下ろしているだけだ。



私が帰ってくると主は「なあ」と一言だけ鳴く。でもそこからは決して動かないのだ。


時々「なあ~」と真似してやると、「なあ」とまた返してくるのが面白くて何度かやり取りをしている。





「ズボラの救世主」


コンビニエンスストアとは非常に便利で画期的な代物である。


近頃では栄養のことまで良く考えられた惣菜から、喉を潤すための豊富な飲み物たち。


女子から絶大な支持を得るスウィーツやアイスクリーム。


読み物やタバコなどの嗜好品、生活必需品やら文房具まで。


おまけにR指定のブースまで備えているのだから全く関心である。



まさかこんなものないだろう、というものまで用意しておいてくれるコンビニはまさにズボラの救世主。


ご飯を作るのが面倒になる時やボディーソープの買い忘れなど、その例はここにはとても書ききれない。


一人暮らしの生活を2年半の間続けてこれたのも、救世主コンビニ様ありきのことなのだ。



しかし、あんなに小さな箱の中に冒頭文のような数の商品を収納しているとは驚きである。


便利な上に欲しいものがことごとく手に入ってしまうとなれば


ついついスーパーに行くよりも近くのコンビニで済ましてしまおう、というズボラ心が働く。



そんなズボラにとっては夢のような場所にも、時には目当てのものがないときだってある。


その休日、私は珍しく部屋の大掃除をしようと急に思い立ち早速風呂場からスタートさせた。


そして鼻歌を歌いながらゴミをまとめていたとき、ごみ袋の残量がなくなったことに気づいた。


コレだけで行けるか…と思ったが、大量のペットボトルの山とまだ手をつけていない部屋のゴミたちが


今使っている袋だけでは収まりきらないであろうことを物語っていた。



私は重い腰を上げて真っ先にコンビニにへと向かい、45ℓごみ袋を探した。


ところが探しても探してもごみ袋が見当たらない。


無いものは無いというのに往生際の悪い私は生活用品を3度程くまなく確認した後


店員にも確認するという重複確認の末、そのコンビニを後にしたのだった。



その足で仕方なくスーパーに向かう途中にも、ごみ袋が売っていないことに勝手に腹を立てる始末。


絶大な信頼を寄せていたコンビニに、私は初めて裏切られたような気さえした。


それからというもの、コンビニへの期待は「どうせあるだろう」から「きっとあるのでは」に変わった。



ちょうどその頃、コンビニ生活ではぽんぽんお金が飛んで行ってしまうことに気づいた私は


買い物の中心をスーパーに切り替え、毎日チラシをチェックする節約生活をスタートさせたのだった。




しかし今でもコンビニは相変わらずしょっちゅう利用しているのだから厄介である。


私がコンビニを利用する理由は、言わば「デザートは別腹」という女子の苦しい言い訳と同じなのだ。







「移動販売」


暑い。ここ数年の暑さはとにかく尋常ではない。


梅雨明けの頃、東京では人の体温を超える気温でカンカン照りの日々が続いた。


実家ではとうとうクーラーを増設するという話を小耳にはさみ、


18年間クーラーのない生活には良く耐えていたものだな、と改めて感じるのだった。


今日も太陽は元気に活動していて、洗濯物を順調に乾かしている。



こんな暑い日には、子供の頃移動販売で買っていたわらび餅のことを思い出す。


「わらび~もちわらび~もち。早くしないと~いっちゃうよォォォォ」


永遠と繰り返されるこのフレーズが目印の、わらび餅の移動販売車。


夏になると表れる恒例のもので、夏休みの醍醐味といっても過言ではなかった。



ところが、友達にこの話をしたところ酷く驚かれたことがある。


焼き芋や物干しざおは良くあるが、わらび餅の移動販売は聞いたことがないそうだ。


そのトラックは焼き芋と同じように夏にやってきて、わらび餅を売りさばいて行くのである。



移動販売になんて無縁になってしまっている今、それが行われているのかさえ分からない。


スーパーで買うよりも安いのか割高だったのかさえ覚えていない。


だけど移動販売はスーパーに行って買うよりも数倍の楽しみを子供に与えてくれる。


「早くしないと~行っちゃうよォォォォォ」


というフレーズが聞こえてきたら、「いかん!早くしないと行ってしまう」


と単純に思ってしまう単純な子供であった私にはそれはそれは楽しいもので


一パックだけ買うことを許され、皆で食べるその味もまた格別なものであった。



今ではスーパーに行くと88円で売っているわらび餅についつい手を伸ばして


一パックを深夜番組を見ながら一人で全部食べることを楽しんでいる。



だけどそれを食べるたびに、わらび餅を移動販売で買っていたあの頃と


あのフレーズを思い出すのであった。