一人で行った台湾旅行で頻脈発作が起きて現地で病院に行き、その帰国直後に職場で再びさらに強い発作に襲われて時間外外来のお世話になった私。


そこで頻脈はおそらく心因性の物だろうと医師に言われ、私はついにメンタルクリニックに行くことを決めました。この症状が出始めたのは血栓症で入院したあとからで、もうかれこれ一年ほど経っています。状態は徐々に悪化していました。



ずっと血栓再発を疑っていましたが、仕事帰りに発作が起きて以降、夕方頃になると不安感や息苦しさが出ることが増え、自分なりにその症状をネットで調べました。すると「夕方の息苦しさは自律神経の乱れが原因」という記事が見つかり、もしかしてこれではないか?と薄々感じ始めてはいました。


しかし、前の記事に書いたように、私は自分が精神的な病気であるという事を絶対に認めたくありませんでした。






https://4travel.jp/travelogue/11150987




その理由は昔に母が同様の発作を起こしているのを嫌悪していた事、あとは知人に鬱で自殺した方がいたからだと思います。心の病気、特に鬱は怖い、絶対になってはならない病気だと思っていたのです。


その亡くなった方とは父の会社で働いていた男性で、家が近く、子供の頃からよく知っていました。いつも笑顔で、私や弟、母にも優しく接してくれたものです。


その方が鬱を発症した原因は分かりませんが、一時期は仕事も出来ず、目を離せないほど落ちていたそう。事務所で一日中無表情にただ座ってじっとしているとか、そういう話を親がしていたのを覚えています。当時は鬱というものがどういう病気かまだよく知らず、そんな気持ちの悪い病気があるのかと思ったものです。



彼は通院治療で回復し、その後に結婚してお子さんにも恵まれました。しかし奥さんとなった方の性格が我儘できつかった事や、同居で妻と親との板挟みになった事などが原因で鬱を再発。


事務員さんなど、かっての状態を知る人が彼の変化に気が付き「早めに病院に行くようにね」とアドバイスしていたようですが、「精神科に行くなんてみっともない」と奥さんが猛反対したとかで行かれなかったそう。こんな風に精神疾患=弱い人、みっともないと思う人は今もなおいると思います。


そして彼はある日突然自ら命を絶ってしまいました。心の限界が来て、追い詰められたのでしょう。


これは私が上京して間もなくの頃の出来事で、母から電話でそれを聞き、とてもショックでした。笑顔のイメージしかないような、あんなにも優しくていい人がなぜ…と思い、とても悲しかったです。鬱病の怖さを知りました。


パニック障害と鬱が全然違うのは分かっています。けれど「心の病気」というものに対する恐怖感や偏見がこういうことから出来てしまっていました。


精神科には行きたくない。でも行かなければ私もいつか彼のようになってしまうかもしれない。世間体やプライドなどはもう気にしていられないのだ…と諦め、仕事が休みの土曜日に家から一番近いクリニックへ行きました。


そのクリニックの前をいつも通っていましたが、中はどうなっているか分からず、扉を開けるのにドキドキしました。


個人病院なので大きくはありませんが、扉の中の待合室は患者でいっぱい。座る席さえ無いほどで、それにまず驚きました。


もう一つの驚きは、見た目が普通の人ばかりであるということです。これは完全な私の偏見ですが、精神科の病院はひとりごとをブツブツ呟いたり、落ち着かなく動き回るような人が大勢いる場所だと思っていたのです。


しかしそんな人は見当たりません。今現在に至るまで5年近く同じクリニックに通院していますが、そういう明らかに重症の方はほとんどいません。大半がごく普通で、例えていうならば通勤電車の風景と何ら変わらないといえばいいでしょうか。どこかが悪いようには見えない、パッと見て健康そうな人しかいないのです。これは自分的に大きな驚きでした。


受付窓口で初診の申し込みをし、番号札を渡されて診察を待ちます。このクリニックでは患者を番号で案内することで、個人のプライバシーを保護しているようです。


大勢の患者が待つ中、空いている席をなんとか見つけて診察の順番がくるのを待ちました。思っていたのとは違う普通のクリニックだということで、少しだけ緊張が解けました。