私は祖父母と同居の家庭で育った。

父と母は共に仕事で忙しく、子供に対して厳しい親だったから、必然的に私は祖父母に懐いていた。特に祖母とは子供の頃に長いこと一緒に寝ていたので、毎晩いろんな話を聞いた。

その祖母がよく言っていた言葉が二つある。
ひとつは「憎さは口が持ってくる」という言葉だ。

これは文字通り。
自分の口から出た言葉で人に憎まれてしまうから気をつけろという意味で「口は災いの元」と同じ。

本当にその通りだと思う。
私は短気な性格ゆえ、これが出来ずに人生で幾度となく失敗や後悔を繰り返している。一度口から出てしまった言葉は消せない。

分かっているけど、ついやってしまう。
これを教えてくれた祖母本人も晩年までそうだったから、自覚していても悪癖を直すのはなかなか難しいのだろう。



でも書いたけど、人は触れられたくない事実を指摘された時ほど動揺し、怒る。本人は無自覚でも、深層心理というか潜在意識下で図星のことを他人の口から言われると過剰に反応してしまうのだ。

私は親の顔色ばかり伺っていたせいか、人の腹の内が結構読める。そして親と言葉で刺し合うような喧嘩をしていたから、相手の急所を選ぶのが上手い。ちっとも褒められない特技だが。

私はそろそろこの癖を直さねばならない。
将来、嫌われババアではなく、好かれるババアになりたいもの…。

「言葉は薬であり、毒でもある」が私の持論。
言葉というのはデリケートで難しい。
相手を傷付ける言葉は結局自分をも傷つけてしまうから、なるべく人を癒し、楽しませる薬となる言葉を口にしたい。