血栓症治療の入院期間。

一般病棟ではたまに検査を受ける事と服薬、入浴ぐらいしかやる事がなかった事もあり、日中の暇な時に外を眺めては様々な事を振り返るようになりました。

まず、ピルを服用した事についての後悔。
生理痛及び排卵痛、その期間の体調不良を緩和させたいという気持ちで、リスクも調べず安易に服用し始めた事を悔やみました。鎮痛剤で我慢すればこんな事にはならなかったのではないか…と。

それは結婚していながら子供を望まなかった自分に対する罪悪感としても感じるようになり「バチが当たったんだ」と自分を責めました。自然の摂理に反していたから天罰が下ったのだと感じたのです。

どちらも自分なりにきちんと考えてした行動だったというのに、この時はひたすら自分で自分を責めました。死というものを身近に体験すると、誰でもこういう考えになってしまうのかもしれません。これは後に「きちんと生き直さねば」という思いからの自己犠牲へと発展していきました。


↓私が最も死に近づいた日のこと




あとは仕事の事も考えました。
皮肉な事に、この頃携わっていたのは病院の新築工事の仕事でした。病院の図面を描いている最中に入院するなんて皮肉な話です。

工事も図面の進捗も遅れ気味だったので、自分がやらねばと焦り、作業が遅れている人の分までやっていました。入院する少し前に「入院でもして休みたいよ」などと冗談を言っていたんですが、まさかこんな事になるとは…。言霊というのでしょうか?バカにできませんよ。

仕事中はほとんど立ち上がる事もせず、ただ黙々と作業をしていたんですが、それが血栓を悪化させる要因だったようにも思えます。静脈血栓症は「エコノミークラス症候群」とも言いますが、飛行機に乗っている時よりも動いていませんでした。

に書きましたが、この時にいた事務所は「席の間借り」で肩身が狭く、そのストレスも相当なものでした。ストレスは血管を傷つけるとかで、血栓ができる一つの要因だそうです。ピル、座りっぱなし、ストレスのコンボからの肺塞栓だったのでしょう。

40代以降の過労、ストレス過多の方、特に喫煙者は血栓リスクが高いです。心筋梗塞や脳溢血で突然死してしまう原因にもなりますから、どうかご注意下さい。症状が出るまで気が付かないのが血栓症の怖さです。日頃から運動したり、水分を多く取るなど意識して気をつけるしかありませんね。




一般病棟に移動してスマホが手元に戻ってきたのでメールをチェックしましたが、所属会社の社長からは何の連絡も無く、それに愕然としました。夫が高額医療費の手続きの件で社長に連絡しているにも関わらず、見舞いはおろか私の出向先への対処や連絡も無いことが信じられませんでした。

この事でプツンと心の糸が切れ、入院中のある日、会社を辞める決意をしました。社長とはもう何年も会っておらず連絡はメールのみ。その辺の派遣社員よりも長いこと放置されているなんておかしいという事にようやく気がついたのです。




そしてある日の夜、突然見舞客がやってきました。
その人の顔を見た時に「ゲッ」と思ったのを覚えています。その人こそ、私を事務所で仲間外れにしていた張本人だったのですから。女性が少ないため上司に言われて見舞いに来たのは間違いないのですが、正直言って困惑しました。表面上は穏やかに会話をし、お礼を言って別れましたが、面会後は複雑な気分でした。

彼女は役職が偉い上司や男性社員にニコニコと媚び、お世辞を言ってご機嫌を取るタイプ。対する私はそういう事を一切せず、仕事だけ淡々とやるタイプ。まるで正反対だから互いを良く思わないのでしょう。処世術は人それぞれですし、合わない相性の人もいますから仕方ありませんが。

彼女にしてみれば、何もしないくせにいいポジションにいる私が疎ましかったのだろうと今では理解できます。私自身は彼女の事を「媚びることしか能がない女」と思って腹の内で見下げていたのです。それが無意識に伝わったから、私を除け者にしたんでしょうね。だからこの件はどちらが悪いとかでも無いし、私にも非があったのだと思い至りました。

病を得て入院し、時間ができた事で今まで考えていなかった事、考えないようにしていた事に嫌というほど向き合わされました。

人には立ち止まらないと見えない事というのがあるのです。それがいい事であれ、悪い事であれ、そういう時間が必要な時というのが、誰にでも人生に一度は必ずあると思います。

昨年に新型コロナの緊急事態宣言で外出自粛になった時、全人類にとってのこういう時間なのかな?と感じましたよ。一旦立ち止まった時に見えてくるもの、それを大切にせねばなりませんね。

今回は病気とは直接関係のない話になりました。
次回は再び治療の話です。