今年ももう12月ですね。本当に1年が経つのが早いです。

 

私は歴史が結構好きなので、NHKの日曜日夜8時からやっている大河ドラマを毎年視聴しています。年末には大抵その年の大河ドラマのクライマックスがあり、私の年末の楽しみの一つです。

 

今年は鎌倉時代の初期を舞台にした「鎌倉殿の13人」をやっており、結構ネットなどで話題になっているようです。ドラマの主人公は鎌倉幕府の第2代執権であり北条義時であり、小栗旬さんが好演しています。

 

また本作は三谷幸喜さんの脚本が秀逸です。さすがに物語の構成がしっかりとしていて、伏線の回収も唸らせるものがあります。また各登場人物の人間心理の描写の説得力が素晴らしく、脚本家の方は非常な人間通であると判ります。

 

この物語は伊豆の小豪族の次男坊であった北条義時が、鎌倉の武士政権のトップまで登り詰める経過を描いています。このドラマにおける北条義時は、特に執権になってからは、非情な権力者というか、かなりブラックなキャラクターに描かれています。

 

鎌倉時代の初期というのは武士政権の創成期であり、かなり血なまぐさい事件が多かったのは史実です。御家人同志の抗争が多かったのは、武士のルールや倫理が未だ確立していなかったために、剥き出しの力のぶつかり合いの他に問題解決の手段がなかったからだ、という歴史家の方の意見もあるそうです。このドラマの世界で描かれる抗争はまるで古いヤクザ映画のようであり、さしずめ「仁義なき戦い 鎌倉死闘編」(私の年齢が判ってしまいますね)といった趣があります。

 

本作の北条義時はそのような厳しい抗争(はっきり言って御家人同志の内ゲバです)を勝ち抜いて武家政権のトップに立つのですが、その過程で純朴な青年から非情な政治家に変貌していきます。そこは主演の小栗旬さんの素晴らしい演技力により、ドラマ前半と終盤において北条義時の風貌・雰囲気はまるで別人のようです。

 

そしてこのドラマにおける北条義時は権力と引き換えに、良心、人間としての情、家族の絆など、人間として大事なものを多く失っているように思えます。そして非情に徹しているにも関わらず、大切なものを失ったことを自分で判っており、その事に内心苦しんでいる様子がこのドラマでは表現されており、私はその点を最も気に入っています。

 

ここからは私の個人的な感想ですが、このドラマの北条義時は本当は非情であったり悪辣な手段を用いることなく、源頼朝が作った鎌倉の武士政権を守っていきたかったのではないかと思っています。しかし規範となるルールや倫理が武士の間に存在しなかったために、正当な手段では生き残ることができず、自分の理想を貫くことができなかったように思われます。その意味でこのドラマの北条義時は権力は握ったものの、失意の人であるように思われます。

 

このドラマにおいてそのような北条義時が唯一の希望としているのが、自分の嫡男であり後に三代執権となる北条泰時です。このドラマを見ていると、自分はもう血塗られた存在となってしまったが、息子には清廉な執権となって欲しいという強く願っているように思われます。史実において北条泰時は、優れた倫理感で政治を行った名執権として知られています。

 

ところでドラマを見ながら、人生で自分の求めたものが得られずに失意や挫折感を有する人はその感情をどのように処理して生きるのであろうか、と考えてしまいました。誰の人生においても、自分が望んだけれど、それが得られないということはあると思います。そしてそのような失意や挫折感にどのような対処するか、ということは幸せを感じるにあたってとても重要であると思われます。

 

一方で自分がこれだけは欲しいと強く望んだものは、代償的なものであっても、人間は結局は手に入れるようにも私は思っています。今年の大河ドラマの北条義時が息子に期待することによって救われているように。

 

私の人生に失意という程のものはありませんが、望んで叶わなかったと感じてことは幾つかあります。それをこれから叶えることができれば良いのですが、私はもう還暦に近い年齢であり、これから大きなことができる可能性が大きいとは思いません。

 

私は若い頃から仕事における成功を、強く望んでいました。そのような感情には、あるいは子供を持つことが困難であるというターナー女性としての代償心理があるのかもしれませんが、それは自分でも判りません。しかし引退も近い年齢になってなお、私は仕事においては平凡であり成功を得ることはできませんでした。

 

しかし別の視点から考えると、自分が最も望んだ「還暦までは健康で仕事をして経済的に困窮しないこと」という目標はもうすぐ達成しようとしています。そしてそのことによって救われている自分がいることは確かです。

 

あるいは、失意や挫折という感情に最も有効であるのは、複眼的な視点を有することかもしれません。1つの見方に固執をしているとネガティブな感情からだっすることが難しくなりますが、誰でも恵まれた点とそうではない点を併せ持っているのですから見方次第で自分を楽にできればよいですね。

 

ドラマの感想と自分の問題が混ざった記事になってしまいました。「鎌倉殿の13人」もあと3回ですので楽しみに視聴したいと思っています。私はこのドラマにかなりはまっているので終わったらロスになりそうです。

 

きょうもこのブログにお越しくださいましてありがとうございました。