【東大教室】ブログ上公開演習➎-2(解説解答)の続きです。

問題は、【東大教室】ブログ上公開演習➎-1(問題)で確認してください。

 

演習➎ 近代(社会経済) 秩禄処分

 

解説

 

秩禄処分と華族

 

秩禄処分の結果、華族は多額の金融資産保有者へと転化し、そうした資金は新企業の発生・発展を助長した

 

たとえば、5%の利子つき公債証書取得者の場合、その利子収入は年平均3,000円を超えていた。

しかも1876年、国立銀行条例が改正されて華族・士族の公債を抵当とする銀行設立が許可されたため、華族銀行といわれる第十五国立銀行をはじめ、多数の国立銀行がつくられた。

また、5%の利子つき公債証書取得者のなかには大土地所有者へと成長した者も多数存在した。

国立銀行条例

 

秩禄処分と下級士族

 

一方、下級士族のなかからは、慣れない商売に手をだして失敗したり(士族の商法)、生活苦から金禄公債を手放して没落したりする者も多数現れた。

 

たとえば、7%の利子つき公債証書取得者の利子収入は年平均30円に満たなかった。

日割にすると約8銭で、これは当時の最低日雇い賃金(東京)の3分の1程度に過ぎなかった。

 

このため、彼らの多くは公債を売って生活費にあてることを余儀なくされ、

「士族は……よく其(その)生計の目的を達する者また之(これ)あらず」(茨城県)、

「其職業に就き生計の目的あるものは絶(たえ)てなし」(鳥取県)

という窮状に立たされたのである(いずれも前田正名(まさな)編『興業意見』)。

 

解 答

華族のもつ金融資産が企業勃興を助長する一方、士族の中には慣れない商売に手をだして失敗するなど困窮・没落する者も現れた。

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