2023年3月7日に日本呼吸器外科学会から膿胸治療ガイドラインが発表されました。

http://www.jacsurg.gr.jp/committee/guideline_em.pdf

膿胸とは、主に細菌感染により、肺の外側にある胸膜腔(胸腔)に膿がたまった状態をいいます。

胸腔の中には血管が通っていませんので、抗生剤で細菌を死滅させようとしても、思うように抗生剤が到達せず、なかなか治らなくなったり、胸腔内で増加した細菌が血液の中に漏れ出して、敗血症という状態になると、救命が困難となります。

 膿胸が治らず慢性化すると、肺の表面を覆う胸膜が分厚くなり、肺が広がらなくなり、一層治りにくい状態になります。

 国内の膿胸に関するガイドラインは今回が初になります。今回のガイドラインの推奨度、エビデンスの強さは、CQ1急性膿胸に対する掻爬術は【推奨の強さ:強い推奨,エビデンスの強さ:中】ですが、慢性膿胸、術後膿胸に対する項目のCQ3-9は【推奨の強さ:弱い推奨,エビデンスの強さ:⾮常に低】と弱いものが多くなっています。また、急性膿胸に対する繊維素溶解剤の胸腔内注入は推奨度決定不能となっています。

 なお、急性膿胸に対して時に使用されていたウロキナーゼは生産国からの供給停止により、使用できなくなっています。

 

1.Clinical Question(CQ)⼀覧(要約) 

 急性膿胸 

CQ1.急性膿胸には、掻爬術(剥⽪術)が勧められるか?(胸腔鏡下、開胸下を含む) 

急性膿胸には、掻爬術(剥⽪術)を⾏うよう推奨する(胸腔鏡下、開胸下を含む)。 

【推奨の強さ:強い推奨,エビデンスの強さ:中】 

CQ2.急性膿胸には、線維素溶解剤の胸腔内注⼊が勧められるか? 

急性膿胸に対して線維素溶解剤を胸腔内注⼊することは現時点では推奨度決定不能であり保留 とする。 

【推奨の強さ:決定不能】 

 慢性膿胸 

CQ3.慢性膿胸には、膿胸嚢除去術が勧められるか? 

胸腔ドレナージを施⾏しても肺が膨張しない慢性膿胸には、膿胸嚢除去術を⾏うよう提案する。 

CQ4.慢性膿胸には、膿胸腔閉鎖術が勧められるか? 

膿胸嚢除去術が困難な慢性膿胸に対して、膿胸腔閉鎖術を⾏うよう提案する。 

CQ5.慢性膿胸には、開窓術が勧められるか?

(⼀期的根治術が困難な場合) ⼀期的根治術が施⾏困難な慢性膿胸患者には、開窓術を⾏うよう提案する。 

CQ6.慢性膿胸には、局所陰圧閉鎖療法が勧められるか?

(開窓術を⾏った場合) 慢性膿胸患者の開窓術後に局所陰圧閉鎖療法を⾏うよう提案する。 

 術後膿胸 

CQ7.術後膿胸には、膿胸腔閉鎖術が勧められるか?

 術後膿胸に対して膿胸腔閉鎖術を⾏うよう提案する。 

CQ8.術後膿胸には、開窓術が勧められるか?

(⼀期的根治術が困難な場合) 術後膿胸に対して開窓術を⾏うよう提案する。 

CQ9.術後膿胸には、局所陰圧閉鎖療法が勧められるか?

(開窓術を⾏った場合) 術後膿胸に対して局所陰圧閉鎖療法を⾏うよう提案する。 

 

済生会兵庫県病院呼吸器外科、呼吸器内科

 

 

兵庫県神戸市北区藤原台中町5丁目1-1

常勤医師(入院担当):

呼吸器内科:金城、湯村

呼吸器外科:吉村、伊藤、木村

外来診察日(2023年4月1日より)         

曜日  月
呼吸器外科 伊藤
木村
吉村 富山  伊藤 吉村
木村
     
呼吸器内科 金城
山本
湯村 湯村 金城  小林/
永野
     

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