私の連続3周野宿の旅のハチャメチャ珍道中を連載中!

目次:【序章】&【第1章】&【第2章】 & 目次:【第3章】

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■3章:遍路3周目■深まる絆

            5. 走れ!逃亡中の遍路は逃げて逃げて逃げまくる!

 

DAY88-2

 

私は、足摺岬から四万十大師堂へ帰りながら40キロの道のりを自転車で走り続けていた。

残り10キロ程になった時、時間を確認すると5時少し前で、少し暗くなりかけているとは言え、完全に日が落ちて見えなくなるまでにはまだあと1時間はある。

あと10キロ程なら、30分あれば着くだろう。このまま寄り道しないで帰れば、余裕だ。

 

すると、その時だった。

突然、一瞬にして分厚い黒い雲が世界をあっという間に覆い、自転車を漕ぐにはギリギリの暗さになった。

 

え!?

ちょっと、待ってー!

うそうそうそ!

 

そう思う間もなく、その3秒後には、バケツをひっくり返したほどの豪雨が襲う。

 

ドバーーーー!!!

 

まさに、ポタポタとか、ザーザーという擬音語で表現するのは、足りない。

ドバーーーーー!!なのだ。

 

ドバーーーーー!!っと降り出したと同時に、その微かな明るさも消え、それこそ真っ暗闇になってしまった。

一瞬にして、プールにでも飛び込んだのかと言う程、全身全てがずぶ濡れになった。

 

私は、突然の事すぎて、理解できない内に、急ブレーキをかけて自転車を飛び降りた。

 

うわーーー!!

マジかーーーー!!

全然、見えないーーーー!!

 

あまりにも雨が強すぎて、前に歩くことさえできない。

一寸先は闇とは、正にこのことで、自分のいる50㎝程だけ見えているだけだ。

いや、むしろ何も見えていないと言った方が正しいかもしれない。

私の目で確認できるのは、私の自転車だけ。

道路さえもどちらへ道が曲がっているのかも見えない。

それに、私は度入りのサングラスをかけているのだが、別に暗くてこのサングラスだから見えなかったという事はない。

このサングラスは、見た目には黒くても、私には、普通の眼鏡と変わらない程の色しかついていないのだ。

だから、サングラスが問題なのではない。

そのサングラスも雨に濡れ、全身ずぶ濡れになりながら、そこへ身動き一つ取れず、立ち尽くしてしまう。

それでも、情けもなくこの雨は、空が海になってしまったのかという程、人生でもこんなに大雨が降っているのに出会ったことがないくらい、降り続けると言うより、空から流れてやって来る。

すると、向こうから車がやって来たようだ。

そのヘッドライトからのハイビームの光が、水滴の着いた私のサングラスに反射して、前が全く見えず、足を一歩も踏み出すことができない。

 

うーーーーん!!

マジかーーーー!!

どうしよーーーー!!?

 

四万十大師堂までは、あと10キロ。

自転車で走れれば、30分もあれば着くのに、歩いたら約2時間だ。しかも、普通の状態で歩いたら2時間だと言うだけで、今、こうやって、一歩足を踏み出すだけで、とても恐ろしく、暗闇を目隠しして歩いているのと変わらない状況では、とても2時間歩いても到着しないだろう。

いくら体力が有り余っているからとは言え、今日は、ここまでで既に95キロは走っているのだ。

滝のようにこの空から流れて来る雨に抵抗しながら歩くには体力が持たない。こうやって、自転車を持って、立っているだけでも私の体力はどんどん奪われて行っている。

それに車の通りは少ないとは言え、この真っ暗闇に流れ込む雨のせいか、時々通る車は、全てハイビームで通り過ぎていくのだから、たまったものじゃない。その度に、目つぶしにでもあったのかと言う程、サングラスの内側しか見えなくなる。

車が通る度に、一歩も足を踏み出せないのだ。

かと言って、サングラスを外してしまえば、視力の悪い私は、そもそも何も見えなくなってしまう。

 

うーーーん!!

どうしよう・・・。

こんなとこに立っていても仕方ないし・・・。

歩くか?四万十大師堂まで。

でも、この状態で歩いたら、夜中になるかもしれない・・・。

 

その場に立ち尽くして、考え込んでしまった。

と、その時、ふとあと少しでドライブイン水車があるのを思い出した。

 

ん?待てよ。

確か、ドライブイン水車は、ここからそう遠くはないはず。

とりあえず、そこまで行ければ、自販機コーナーとか、トイレの軒先に逃れることができるから、こんな所で身体を冷やして体力を奪われているよりはましか・・・。

あと、500mか?

それならなんとか歩けるだろう。

いや、まだあと1キロくらいあるかもしれない・・・。

どうしよう?

でも、どう考えてもこんな所に立っているより、ましに決まってる!

 

私は、最後の気力を振り絞って、自転車を押しながら歩き始めた。

前を見ても何も見えないので、本当に足元だけに視線を集中させ、溝や道路にはみ出して何処かへ落ちたりしないよう、注意しながら一歩一歩を踏み出した。

車がやって来る度、ハイビーム攻撃にやられて、何度か立ち止まりながら、車が過ぎ去ったらまた歩き出すと言うのを繰り返す。

 

私は、ラッキーだった!

なんと、その立ち往生した所から、本当に1分程歩いたところが、水車だったのだ。

 

おおおーーー!!

よかったーーー!!

ほとんど水車まで私は走って来ていたのか!

 

私は、少し嬉しくなりながら、水車へと入って行き、自転車を自販機が立ち並ぶところへ止めて、一旦、自販機の置いてある屋根の下へと非難する。

雨でずぶ濡れになった私の全身は、このまま雨に打たれ続けると、冷え切って行ってしまう。

既に、寒かったのだが、無類の暑がりの私は、この時点では、まだ耐えられる状態だった。

 

どうしよう?

このまま濡れた状態でいると、寒いんだけど、荷物が・・・。

ああああ~~~~!!

着替えたいけど、荷物がない~~~~!!

荷物は、大師堂にあるし・・・・。

でも、大師堂までは10キロあるし・・・。

こんな見えない中、歩くなんて夜中になるし・・・。

今日の所は、荷物を諦めて、水車のトイレで寝れるけど・・・。

だとしても、着替えもテントもないし、この濡れたまま水車のトイレで寝るのもあり得ない・・・。

参った!

 

私は、遍路3周の中で、ここまでどうしようもない状況に陥ったことがあっただろうか?

いや、ない!

私は、遍路3周の中で、ここまでどうすることもできない程、手づまりな状況になったことがあるだろうか?

いや、ない!

私は、遍路3周の中で、途方に暮れ、泣きたくなるような状況があっただろうか?

いや、ない!

 

私の気持ちは、落ちようとしている。

私は、それをギリギリのところで引き止める。

 

おい!

諦めるな!

ここでお前が諦めたら、全ては終わりだ!

あんたの事なんか、今、ここで誰も見てないし、あんたが諦めたら、誰もあんたを助ける人がいないんだよ!

あんたしかいないんだから!

 

私は、ギリギリのところで、気持ちを引き戻し、どう切り抜けるのかを考え始める。

 

そう言えば、雪蹊寺で会った元気のいいママチャリのお兄ちゃんは、5時までに間に合わせるため、タクシーを使おうとしてたっけ?

あ、そうだ!

ここから10キロならタクシーで行ってもしれているかも!

それに、私の自転車は、タイヤを簡単に外して分解できるから、トランクに乗せてもらえるかもしれないし。

そうか!

今日は、こんな状況だから、身体の事を考えるとそうするしかないか!

 

この当時は、スマホなどのない時代だったので、ネットで電話番号などを検索することができなかった。

私は、即座に辺りを見渡すと、ドライブイン水車の食事処が調度店じまいをするギリギリだったので、そこへ走る。

ドアを開けると、店の中では、調度店じまいをするところだったので、私がドアを開けたのが、少し迷惑そうな雰囲気でもあった。

 

私「あのー!すいません!」

店「え?もう、お終いだけど。」

 

私は、ドアの外に立ち、話を続ける。

 

私「あ、いや。あの、急に大雨が降って来て、ちょっと困っているので、タクシーを使おうかと思うんです。それで、この辺の電話番号を教えてもらいたいんですよ。」

店「あ、そう。ちょっと待って。」

 

そう言って、電話番号を調べたのを読み上げてくれたので、私は、ドアの外に立ったまま、言われた電話番号を入力する。

 

私が「ありがとうございました」と言い終わらないうちに、目の前でドアがピシャリと閉まり、カチャリと鍵をかける音も私の目の前で聞こえた。

後は、この電話番号に電話をするだけだ!

私は、ドライブイン水車のドアの前に立ったまま、直ぐに、発信ボタンを押そうとしたその瞬間!

 

うわーーーーーー!!

やめてくれーーーー!!!

 

なんと、発信ボタンを押すその瞬間に非通知の電話が入ってしまったのだ!

発信ボタンをまだ押していなかったと言う事は、今、教えてもらった電話番号は、完全に消え去ってしまったことになる。

正直、店じまいしているのにまたドアをノックして開けてもらうことに躊躇する。

とりあえず、なり続ける電話に出ない事には、先に進めないので、慌てた様子で電話に出る。

 

私「はい!」

男性「あ、Noisy!俺だよ!」

 

その声は、勝さんだった。

電話をしてくれるのは、とても嬉しかったのだが、何というタイミングか!

私は、今閉められた鍵をもう一度、なんとか開けてもらって、電話番号を教えてもらわなければならないので焦っていた。

 

私「あ!勝さん、今、ごめん!私、ちょっとそれどころじゃなくて!」

 

勝さんは、勘のいい人だ。直ぐに何かを悟ってくれたようだ。

 

勝さん「おい!お前、何処だ!?」

私「水車!」

勝さん「わかった!水車だな!」

私「ごめん!今、ここでちょっと立ち往生してるから、落ち着いたら!」

勝さん「わかった!」

 

勝さんは、直ぐに気を使ってくれ、私の場所だけを聞いたら、あっと言う間に電話を切ってくれた。

私は、即座に、もう一度、ドライブイン水車のドアを叩いた。

 

「すいませ~ん!」

 

トントントン!

 

「すいませ~ん!」

 

トントントン!

 

中に電気も付いていて、まだ話し声も聞こえるのだが、店じまいした後に誰かに尋ねて来ては欲しくないだろう。

そのドアは、2度と私の為に開けられることはなかった。

 

 

つづく・・・   

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