「実は地下で目覚めて上がってきたばかりなんだ。」
この主張が受け入れられるのか、そしてどういう反応が返ってくるかによって今後の僕の運命は決まるだろう。
嘘はついていない。
心臓の鼓動が早くなるのを隠すように何とか振る舞うが、集団は案の定少しざわつき始めた。
やはり脱走者だとバレてしまったか。
「地下ってなんだい?このトンネルの地下ってことかい?」
どうやら何も知らないといった反応で、であればどこから這い出てきたのか案内してくれないかと言われる。
どこかに連れていかれる展開かと思いきや、意外な反応だ。
僕はやってきた道を引き返して、トンネル横穴の機械室へと案内した。
もちろんこの下へ長く通じるダクトから上がってきたのは本当だ。
「へぇ、こんなところがあるなんてね。」
「そろそろ日が傾いてきたから急がないと。」
「記憶喪失の兄ちゃんも一緒に来な。」
来なってどこへ向かうのだろう。
トンネルを抜けてそのまま一時間は歩くらしい。
途中で行き倒れた人間の防寒着でよければ着ておけと受け取ると、僕はこの一団に加わりそのままついて行くことになった。
記憶喪失、か。
外は一面雪景色で、これは寒い。
「空気が乾燥しているから、マスクしとけ。」
タートルネックのくたびれたセーターも受け取っていたから、その襟を目元まで伸ばしてフィルター代わりにする。
山肌を風が駆け下りてくるが、周囲の木々に遮られて渦を巻いている。
木の葉が渦に巻き込まれているように、雪ではない薄くてややくすんだ白い小さな物体が渦を巻いて舞っているのがわかる。
これはと手を伸ばすと、塵のようだ。
間近で見て見るとそれはビニールのようなもの、軽くてくすんだ白い粉のようなものだった。
「濡れてなきゃ燃やしてしまうんだがな。
マスクなしだとこいつらが肺に入るんだよ。」
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※この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在する人物や団体とは一切関係がありません。
※この作品は2026年5月5日にnote.comに掲載したものであり、その一部です。

