「たしかに、俺らが生き続けられるかは連中次第だよなあ。」
もうすっかり慣れた見回りでの相棒との会話、つまりは他の連中の目や耳が無い空間での気兼ねないやり取りが日々の救いになりつつある。
「籠城戦なら、もうとっくに食べ物に困ってるはずさ。」
「たしかに、何かおかしい気はするが。」
「だろ?なのにビールなんか飲めるのはすごくないか?」
「そりゃ、リニア線で物流確保してるって言ってたじゃないか。」
「いや、だから"そこ"なんだよ。」
「なにが?」
「ここの上が主な戦場なら、その動いているというリニアで避難すればいいじゃないか。」
「あ。」
「そもそも何か月もここに留めておく理由がない。」
「たしかに妙だな。」
「要人こそ、なぜここに留まっているんだか。
そもそも本当に居るのかね。」
「なら、向こうも危ないんじゃないか?」
「だとしたら相手も本気だ。もう時間の問題じゃないか。」
「今は飲み食いに問題が無いからな。
つい、当面このままだろうと無意識に期待してしまう。」
「居たくないから元の生活に帰るって言い分が通らないくらいには自由がないもんなあ。」
「そもそもこんな見回り必要なのかね、それこそ監視カメラでやるとか、異常があった時くらいの対応でいいはずなのに。」
「映画みたいに小回りと気が利く小型ロボットが動き回るマシンシティーなら、とっくに俺達も前線に行かされただろうな。」
「人手が必要ということか。」
「街が焼かれる緊急時に法がどうとかなんて言ってられないだろうし、こうなった以上、ここの支配者の連中がヒエラルキーの上になっちゃうよね。」
「なるほど、寝床と飲み食いする権利の代償がこの施設の維持管理ってわけか。」
「隣の区画の連中は力自慢が集められていたって話を信じれば、彼らもここを内側から守るただの物理的な戦力だったんだろう。」
「じゃあ、さすがに俺らにまで声がかかる事はないか。」
「どうだろうな。食料と手段が尽き始めたら、体制の維持と時間稼ぎのために行けって言われるんじゃないか。」
「技術者でもか?」
「相手次第だろ。今、誰の何のために籠城しているかにもよるし。このまま収まれば、我々を守ったと言えるうえに復興も考える必要があるだろうから。」
「とことん振り回されそうだなあ。」
※この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在する人物や団体とは一切関係がありません。
※この作品は2025年8月3日にnote.comに掲載したものです。
