食事をしに居住区画へと帰ると、自分たちと同じように仕事と役割を終えて帰ってきた人たちがすでに食事をしているようだ。
一度に50名ほどが同時に食事をとれるくらいの席が用意されていて、収容されている人数も少ないためか満席になったことは無い。
迷彩服を着た警備員と監視カメラも配置されているから、少し窮屈ではあるものの、会話の内容を制限されたりすることなどない。
まるで、半導体工場のような場所に住み込みで働き、その社員食堂に詰めているような感覚だ。
「君の息子はいないのかい?」
「あいつはちょっと遠いから、別のところで食べているはずだな。お前さんの息子も見ないじゃないか。」
「個室になってから、なかなか会えないね。
まあ、そのうち会えるさ。」
「はじめは心配してたもんな。」
「そりゃそうだよ。状況がさっぱりわからない。」
「それなんだが、やっぱり他の事を知っている連中はここで見ないよな。食事を作っている連中も別でこうしているんだろう。」
「ここは思った以上に広いようだね。」
「ただの避難所にしては設備が大げさすぎるうえに、役割のわりに高度な機材の提供が無い。」
「何かを待ってるのかもなあ。」
「何を?」
「さあ、わからんよ。」
「数か月経ってもこれだぞ。よく怒り出すやつが出ないもんだ。」
「それでも少し考えることが出来る人間ばかりが集められているはず。君だって、得体のしれない彼らに下手に感情を出して身を危うくしたくは無いだろう。」
「…まあ、だからこうしておとなしく座ってるんだがな。」
「ビール片手にだろう?」
「そうさ。何もしなけりゃ飲み物も自由なのは不思議だよな。」
「ここにいる間はお金の概念が全く無いから、元の世界に戻った時が心配になるよ。」
「星空が見たくなることはあるがな。」
「そうなんだよな。この状況の気味の悪さはそこなんだよなあ。」
そんな話をしていると、さっきからどうも視線を感じる。
「おれは明日非番らしいから、お前さんしっかりやれよ。」
「しっかり、か。
君もあんまり飲みすぎるなよ。」
さて、部屋に戻ってシャワーを浴びることにしよう。
※この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在する人物や団体とは一切関係がありません。
※この作品は2025年5月31日にnote.comに掲載したものです。
