「なるほど、今回は過去だったと。」

 

 

 ええ。懐かしいというには昔過ぎて、むしろ新鮮でしたよ。

 

 

「そうでしたか。
他に出会った人や、おかしいなと思った点はありませんでしたか?」

 

 

 いいえ、特にありませんでしたね。

 

 

「わかりました。
今回はお薬を減らしておきましょう。
これ以上は負担が大きすぎますからね。」

 

 

 そう言うと、後ろに控えていた看護師さんと何かを相談し始めた。

 

 

「はい、じゃあ本日はこれでおしまいです。」

 

 

 いつもの心電図のようなものはやらなくていいのだろうか。

 

 

「前回からまだそんなに経っていませんからね。
また次回にやりましょうか。」

 

 

 そう言いながら先生が、わたしの背後へ軽く目線を向けた。

 

 

 

「じゃあ帰りましょう。
少し天気が怪しいのでタクシーを呼んでもらいました。」

 

 

 あら、それはありがたい。
そう言えば、傘なんて持って来ていなかった。

 

 

 ありがとうございました。

 

 

 そう言って診察室を後にしようとすると先生が続ける。

 

 

「本当に良い息子さんをお持ちで。」

 

 

 

 ああそうか。

 

 

 亡き咲那さんの忘れ形見。

 

 

 改めて見るとまあ、すっかり立派な青年になったなあ。

 

 

 

 ごめんね、心配かけちゃって。

 

 

 あははと笑って「仕方ないですよ」と言ってくれる。

 

 

 

「我々が生き延びるにはもう、自分たちのルーツにすがるしかなくなってしまいましたから。」

 

 

 あなたはどう?

 

 

「うーん。
 

 

――僕にはまだわからない気がします。それはそうと、」

 

 

 なあに?

 

 

「良かった。本当にお年寄りみたいでしたから。」

 

 

 そう?

 

 

「そうですよ。」

 

 

 そっか。

 

 

 

 今日は寄ってく?

 

 

「いえ、今日は大丈夫でしょう?」

 

 

 ありがとう。

 

 

 

 今、このカオスな状況は自然に生まれたわけではなかった。

 

 

 その昔、おじいさんが生きていた頃より昔の大戦が終わってから、それぞれの国がそれぞれに文明と文化を楽しんでいて、それでいて気にしていなければ気づかないおかしな方向に進んでしまう。

 

 

 さて、生きるためには食べ物が必要なのだが、これらは農作や狩猟を行い確保するのはおそらく誰もが理解できているはずだ。

 

 

 そう。気が付けばそれを人間に対して行う輩が世界を支配していた。

 

 

 理解できるだろうか。

 

 

 これが大きな問題だった。

 

 

 

※この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在する人物や団体とは一切関係がありません。

 

※この作品は2025年3月30日にnote.comに掲載したものです。